川崎市で20歳の女性の遺体が見つかった事件で、元交際相手の男が死体遺棄容疑で逮捕された。別れた後から、男は女性につきまとい、恐怖を感じた女性や家族が幾度となく警察に相談しても、警察の動きは鈍かった。女性が身を寄せていた祖母の家の窓ガラスが割れていると警察に相談したときも、警察は指紋ひとつ取らず、結果的に女性は、男の自宅から遺体となって発見された。
悲しいことに、私たちはこういう事件を幾度となく目にしてきた。
「ストーカー規制法」が成立するきっかけになった、1999年に桶川(埼玉県)の駅前で大学生の女性が元交際相手の男らに殺された事件。三鷹市(東京都)で自宅のクローゼットに隠れていた元交際相手の男に殺された女子高生の事件。博多(福岡県)の駅前で帰宅ラッシュ時に元交際相手の男に何度も何度も刺され殺された女性会社員の事件。長崎県で女性の母親と祖母が、女性の元交際相手の男に殺された事件。同じく長崎では、離婚した元夫に2歳の子供を会わせにきた元妻が殺された事件もあった。
私は今、これらの事件を、ネットを調べないで書いてみた。記憶に残るだけでもこれだけ思い浮かぶことがつらい。そしてもう忘れている事件のほうがきっと圧倒的に多いことがもっとつらい。この社会は、男性に殺されている女性があまりに多い。女性に拒絶されたことで怒りを募らせ暴走する男性たちが、あまりに多い。
警察庁が公表した2023年のストーカー事案の相談等件数は、1万9843件だった(加害者の約8割が男性である)。加害者からの報復を恐れ、被害を訴えることができない女性もいることを考えると、実際の被害の件数はさらに上回るだろう。年間約2万件……かなり衝撃的な数字である。私は数千件ではないかとどこかで考えていたので(それだって多い)、正直、この数字に言葉を失う思いでいる。