その一方で優勝候補筆頭だったV・ファーレン長崎が、第7節から7戦未勝利(3分け4敗)と苦しみ、第14節を終えて勝点20(5勝5分け4敗)の10位という予想外の位置にいる。“最強の個”マテウス・ジェズスはリーグトップの8得点を挙げ、チームとしてもリーグ2位の25得点と攻撃力は健在だが、その分、守備に負担が増えて最下位の愛媛とわずか1点差の24失点を喫している。ようやく第14節で8試合ぶりの勝利を挙げたが、相手は9戦続けて未勝利と不振が続いていた富山であり、まだまだチームの戦いぶりに信頼が置ける段階ではない。富山戦で故障から復帰した松澤海斗に期待したいところだが、まずは守備陣を再整備しなければ自動昇格圏内浮上は難しくなってくるだろう。5月25日に予定されている第17節の千葉戦が一つの分岐点になりそうだ。
さらに、北海道コンサドーレ札幌が勝点16(5勝1分け8敗)の14位と成績が振るわず、ジュビロ磐田、サガン鳥栖の2チームも同じ勝点21(6勝3分け5敗)でプレーオフ進出圏外の8位、9位とJ1降格組3クラブがスタートダッシュに失敗している。また、昨季後半戦で快進撃を見せて今季の前評判も高かったモンテディオ山形も勝点16(4勝4分け6敗)の11位と低迷。選手個々の能力、選手層などを考えれば、この4チームは今後浮上して行く可能性があるが、調子が上がらない中でも自動昇格圏との勝点差10以内はキープしたいところだ。
そして、この4チームの上の順位にいるのが、3位のRB大宮アルディージャ(勝点27)、4位のFC今治(勝点25)、5位の水戸ホーリーホック(勝点23)、6位の徳島ヴォルティス(勝点22)、7位の大分トリニータ(勝点21)である。
レッドブル傘下に入った大宮は開幕前から注目されており、現在の順位もある程度予想できたが、その大宮と同じくJ3から昇格してきた今治が4位にいるのはハッキリと“サプライズ”だ。チームを率いるのは、J初采配となる42歳の倉石圭二監督。開幕黒星スタートも、攻守におい非常に整理された戦いぶりを続け、第2節から第14節まで13戦負けなし(6勝7分け)で勝点を積み上げてきた。勝ち切れない試合もあったが、来日4年目で初のJ2舞台となっているエースのマルクス・ヴィニシウスがここまで7得点と期待通りの働き。怪我で戦列を離れていた横山夢樹がGWの連戦期間に復帰したことも大きかった。倉石監督の采配も含めて、今後も上位争いが期待できる今季注目のチームとなっている。
5月6日に全チームが14試合を戦い終え、今季の上位争いの「大枠」が見えてきたが、まだシーズンは半分以上の24試合を残している。毎年、大きく順位が入れ替わる夏場の戦いを含めて、ここからJ1昇格クラブが決まるまではひと山もふた山もある。予想外の序盤戦となったからこそ、最後の最後まで“魔境”が続くことになりそうだ。
(文・三和直樹)
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