中国では、25年4月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が前月から1.5ポイント悪化し、好調・不調の境目の50を下回った。トランプ関税による受注の激減が反映されている。
こうした状況を見れば、米国よりも中国の方が苦しそうに見える。
同じ痛みでも中国人は耐えられる
そこで、ある中国政府関係者にその疑問をぶつけると、意外にも、「確かにそうかもしれません」と素直に認めた。しかし、「同じ痛みでもそれに耐えられる人と耐えられない人がいますよね」と言って微笑む。「アメリカ人には耐えられない痛みでも、中国人は耐えられると考えた方がいいですよ」と言うのだ。
4月15日配信の本コラム「米中『関税戦争』最悪のシナリオは“台湾有事” 米国は戦わず日本の自衛隊が“最前線”に立たされるリスクも」でも指摘したとおり、中国は面子の国だ。それだけでも、中国側が折れるとは考えにくい。しかも、世界中がトランプ批判に回っている。中国が自由貿易の旗手として敢然と米国に立ち向かうという図式は、中国国民のプライドをくすぐり、主戦論が高まっている。
一方の米国民はどうか。
例えば、アメリカでは、靴を作るメーカーがほとんど存在しない。ナイキの靴も大半がベトナムや中国製だ。米国は中国製の格安の衣料品や家具や雑貨を大量に輸入している。中国製のおもちゃなしでクリスマスは迎えられないだろう。米国メーカーの電気製品でも中国製が市場を席巻している。これら全ての製品が何割も値上げされたり、輸入されなくなったりしたらどうなるのか。
物価が上がるだけでなく、生活そのものが成り立たなくなるとさえ言われる。
米国の代表的な小売業者であるウォルマート、ターゲット、ホーム・デポ3社の幹部がトランプ大統領にトランプ関税反対を表明した。トランプ氏に逆らうと報復されるという恐怖感から、多くの企業が下を向いておとなしくしている時に、あからさまに盾ついたわけだ。彼らのバックには全米の庶民がいる。トランプ氏も彼らの声を無視できないということだろう。