ベッセント米財務長官も、米中の関税のレベルは持続可能ではないと認めている。
つまり、もうすでに、トランプ政権は、自分たちの方が弱いと白状してしまったのだ。

今回の戦いも、10年計画で乗り越えるつもりだった
それを見た中国は強気になる。自ら先に譲歩することはまずありえない。先に譲歩するのは米国だと主張し続けるだろう。
冒頭の中国政府関係者の話で何より印象的だったのは、中国は、米中貿易戦争を数年単位のものとは考えていないということだ。中国は、常に10年、それどころか、50年、100年単位でものごとを考える。今回の戦いも、10年計画で乗り越えるつもりだが、実際には、それよりも早く勝利できると信じていた。
米国が特にこだわるAIや先端半導体をめぐる「戦争」でも、時間をかけて必ず克服するという目標だが、ここでも予想よりも早い進捗を示している。
先端半導体、OS、クラウド、AI等の「国産化」が急加速しているのだ。
SMIC(中芯国際)など中国の半導体企業は普及品だけでなく、先端品にも参入し始めた。ファーウェイ(華為技術)は独自OS「Harmony」であらゆるDXを先導し、自社チップ開発でも気を吐いている。半導体製造装置の国産化プロジェクトも始まった。
AI向け半導体で世界を席巻する米エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは、「中国は遅れていない。彼らは私たちの非常に、非常に近い、すぐ後ろにいる」と述べた。
中国は、Deep Seekが世界を驚かせたことに胸を張り、ロボットでももうすでにかなり追いつき、AI人型ロボットではアメリカを追い越しつつあると威勢がいい。
さらに、中国人と話すと、最近は「宇宙強国」の話題がよく出る。中国のテレビニュースでは、年がら年中ロケットの打ち上げ、帰還が伝えられる。宇宙ステーションには飛行士が常駐し、通信が届かない月の裏側に探査機を着陸させて世界を驚かせた。近い将来に月への有人着陸を果たし、火星への有人飛行は中国が最初ということも十分にありそうだ。