もっと言うと、普通の芸能事務所であれば、契約解除に至った裏事情についてタレント本人がYouTubeなどでここまで赤裸々に語ることを認めたりはしないだろう。そんなくるまの行動を黙認しているのは、ある意味で吉本興業がタレントの自主性を尊重しているとも言えるのだ。
今回の件について、吉本興業が絶対的に正しいとか、くるまが全面的に悪いとか、そんな単純な話をしたいわけではない。くるまにも彼なりの事情や思いがあっただろうし、まだまだ語られていないこともたくさんあるだろう。
契約解除の現実は見逃せない
それでも、所属事務所の信用を傷つけてしまった結果として契約解除に至った、という現実は見逃せない。彼の弁明の中でも、彼自身が「事務所に許可を取らずに謝罪動画を公開した」ということ自体は否定していない。
また、「くるまはクビになったのに、同じように不祥事を起こした松本人志が復帰するのはおかしいのではないか」といった意見も見かけるが、この2つを並列して論じるのはフェアではない。松本の件は全く異なる性質の問題であり、その是非については個別に考えるべきだ。くるまの問題については、明らかになっている範囲の彼の行動だけを基準に判断するべきだろう。
ただ、事務所を離れるからといって、彼の芸人としての価値が失われるわけではない。コンビとしての活動も続けられるし、今の時代にはフリーで活躍している芸人もたくさんいる。
吉本興業から離れてできなくなることもあるが、できるようになることもたくさんある。彼が新しい環境の中で自分の持ち味を生かして活動を続けていくことを楽しみにしている。(お笑い評論家・ラリー遠田)