
備蓄米のゆくえは
3月、政府は備蓄米の放出を始め、全国農業協同組合連合会(JA全農)が9割以上を落札したことが報じられた。
中村さんは、「備蓄米が米屋の店頭に並ぶことはまずない」と話す。
「備蓄米はJA全農と取引のある大手の卸売業者に流れる。卸売業者は大口の得意先である全国展開のスーパーなどに売る。大手卸売業者と取引のない中小のスーパーや米屋に備蓄米が来ないのは致し方ない」(同)
外国産米も値上げ
西友やイオン系のスーパーでは外国産米を扱っているが、米屋に外国産米が並ぶのも時間の問題と中村さんは考えている。
その外国産米をめぐる入札競争も激しさを増している。昨年11月、西友は台湾産米「むすびの郷」を5キロ2797円(税込み)で販売開始したが、「調達価格が変わった」(西友広報)ことから、3769円(税込み、4月25日時点)と、大きく値上がりした。
米の品薄が続き、米価格が上がり、米屋が廃業していく――。
どうすれば、状況は改善するのか。全国商工団体連合会の太田義郎会長はこう話す。
「実際にやってみないとわかりませんが、備蓄米を50万トンほど放出すれば、市場はひとまず落ち着くと思う」
農林水産省によると、昨年6月までの1年間の米の需要は702万トンだった。ひと月あたり約58万トンで、それとほぼ同量の米を放出すれば、「市場心理は落ち着く」と太田会長は見る。
「米が豊作であることがもう一つのポイント。生産量の多い新潟県や北海道、東北地方で米の出来がよければ、米不足は解消すると思う」(太田会長)
来年は備蓄米もなくなる
備蓄米の総量は91万トン(2024年6月末時点)。政府は今年産の米が出回る前の7月まで、備蓄米を毎月一定量放出する予定だ。
前出の中村さんが心配するのは来年以降だ。
「頼みの綱だった備蓄米は事実上なくなる。もし今年中に米不足が解消しなかったら、トランプ政権の要求をのむかたちで、米国産米の輸入が一気に拡大するかもしれません」
(AERA編集部・米倉昭仁)