
「転売ヤー」は暗躍しているのか
米が手に入りづらいうえ、価格が高騰している――。そんな状況に目をつけ、昨今、投機目的の「転売ヤー」が農家を訪れ、米を買いあさっているという報道もある。
「転売ヤーに米を売っている農家が大勢いるとはとても思えません」と話すのは、別の米屋の店主、中村真一さん(仮名)だ。
「転売ヤーは米の値段が落ち着いたら、買いにこない『一見客』。私が知るかぎり、農家は信頼関係や長い付き合いを大切にするからです」(中村さん)
農家と信頼関係を築いてきた
中村さんは、「もう新米の時期まで米は入ってこない」と、腹をくくっているが、米不足を「恐れていない」。店の倉庫には例年の倍以上の在庫を確保しているからだ。
昨年秋から米を買い増ししてきた。民間在庫の推移などから、「今年も米騒動が起こるのは確実」と予測したからだ。そして、そのほとんどは問屋から仕入れた米ではなく、懇意にしている農家から直接買いつけたものだ。
中村さんは20年ほど前から農家との直接取引を増やしてきた。「同じ銘柄の米でも産地や農家によって味が異なります。品質のよい米を作る農家を探して、関係を築いてきました」(同)
この方針が結果的に奏功したかたちだ。
「米を保管する場所代や空調の電気代はかかりますが、これまでの取り扱い実績からすると、7月までは乗り切れると思います」(同)
新米の価格はさらに上がる
懸念するのは、米価格のさらなる高騰だ。
「現段階で、今年秋に取れる米の値段はもう決まっています。まさに『青田買い』です」(同)
通常、中村さんが農家と米の価格交渉をするのは、10月ごろの収穫時期だが、米の獲得競争が激化しているのだ。
つい先日も、あるブランド米を「JAが3万3000円(60キロ)で買うと言っている」と、農家から中村さんに連絡があった。昨年秋も高値だったが、今年はさらに大幅にアップした。
「われわれの買い取り価格は4万円以上になるでしょう。そこに経費や利益を乗せたら、控えめに言っても5キロ6000円前後になる。そんなに高い米をお客さんは買ってくれるのか。米離れが心配です」(同)