
相も変わらず、米が高い。政府備蓄米の放出後も価格が下がる気配はない。価格が上がる理由はシンプルで、売る米がないのだ。米屋ですら、「米が入ってこない」「廃業寸前」と嘆く。
【写真】備蓄米はどこへ? すぐ売り切れる3000円台の「ブレンド米」
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米屋も青息吐息
備蓄米を放出したと政府は言うけれど、米はなかなか買えない。価格も下がるどころか、上がる一方だ。
この事態に青ざめているのは消費者だけではない。米屋もだ。
「秋まで店がもたないかもしれません」
そう語るのは、東京近郊の老舗米店の店主、坂本稔さん(仮名)だ。
「問屋(卸売業者)に頼んでも米が全然入ってこない。今日も3軒の問屋に問い合わせましたが、そのうちの2軒は『一粒の米もない』と。残り1軒は『取引のあるスーパーに1回、米を送ったら在庫は全て終わり』だと言っていました」
入荷するのは注文した量の3分の1
4月下旬のこの日、店頭には北海道産ゆめぴりかや新潟県・魚沼産コシヒカリなどが並んでいた。商品の数は少なく、10袋にも満たない。
「問屋に注文しても、いつ届くのかまったくわからない。入荷しても注文した量の半分や3分の1なんです。一般のお客さんに売れる米はこれだけです。価格の高い米だけがかろうじて残っている」(坂本さん)
価格は5キロ4000円台後半から5000円台後半だ。坂本さんは声を落とす。
「在庫が底をついたら店を閉めるか、米屋として国産米にこだわってやってきたのに外国産米を仕入れて並べるか。そんな可能性もある状況です」
米屋の廃業が相次ぐ
米不足を背景に米屋(米穀店)の廃業が目立っている。帝国データバンクによると、昨年度、米屋の休廃業・解散は、計88件。前年度から2年連続で増加し、コロナ禍以降の5年間で最多となった。
坂本さんは、今年に入ってしばらくして米の確保に苦慮するようになった。供給が不安定な状況は全国で起こっているとみられ、中小のスーパーの棚に並んだ米はすぐ品切れになってしまう。
「新規のお客さんから『米はあるか』という問い合わせをいただきますが、お断りするほかない。普段買ってくださるお得意さんの分が足りなくなってしまう。本来、米が売れればうれしいのですが、今は在庫が減っていく不安のほうが大きい」(同)
