高度な意思決定も可能に

 AGIのビジネス活用はまだまだあります。

 そのひとつが意思決定です。AGIは、自主的で高度な意思決定も可能となります。例えば、あなたがビジネスにおける重要な意思決定に迫られたとしましょう。

 あなたが何かしらの意思決定を行うとき、これまで蓄積してきた知識や過去の経験、あるいは直感を頼りにするでしょう。

 でも、ひとりの人間が一生のうちに蓄積できる知識量や経験数には限界があり、直感を頼りにしても時に誤った意思決定をしてしまうこともあるはずです。

 そんな時、AGIを活用することで、膨大な学習データから導き出した最適な意思決定のサポートをしてくれるのです。

 さらには、クリエイティブな領域にもAGIは強力なサポートを発揮してくれます。これまで、「クリエイティブな分野は人間ならではの仕事」と考えられていましたが、AGIの登場によって、斬新なアイデアを生み出すのが容易になることは間違いありません。

 AGIは膨大な学習データを持っているだけではなく、人間の持つ欲望や満足感といった感情を考慮したアイデアを生み出すことができるため、人間には到底思いつかないようなアイデアを創造できるようになるのです。それによって文学から音楽、イラストや映像の生成といったクリエイティブな活動に大きな革新をもたらすでしょう。

 詳しくは後述していきますが、ほかにもAGIがビジネスにどれほどの恩恵をもたらすのか、実にさまざまな仮説を立てることができます。AGIの登場により、新たなビジネスモデルやサービスが生まれ、新たな市場が形成されることは想像に難くありません。

 もちろん、ビジネスの分野だけではなく、教育や医療、科学技術などあらゆる分野でAGIは大きな可能性を秘めているのです。

AGIは、いつごろ実現するのか

 では、万能型AIと呼ばれるこのAGIは、いつごろ実現するのでしょうか。実は、近年驚くべき発展を遂げているAI分野においても、AGIは未だ実現していないのが実情です。

 現在、世界のありとあらゆる企業や研究機関がAGIの研究と開発に積極的に取り組んでいます。世界最先端のAGI研究開発に取り組んでいるのが「ChatGPT」を世に送り出したOpenAI、さらにはGoogleやMicrosoftなどが、AGIの実現に向けて日夜研究開発に勤しんでいるのです。

 2025年の3月末時点でのAGIに向けた進展を眺めてみましょう。

 24年9月にはOpenAIが、ChatGPTのモデルo1(オーワン)において、数学オリンピックの予選問題の正答率が8割に達したと発表しました。これは私にとってはかなりの衝撃でした。なぜなら、ChatGPTが初めて公表された際には、「100かける100かける100はいくつ?」という問いかけに対して、「100万」と答える一方で、「もう一度聞くよ? 100かける100かける100はいくつ?」と再考を促すと「10億」などと頓珍漢な答えが返ってきていたからです。

 仕方ないので、かなり長い間、私はChatGPTが苦手な数学関連の話題を扱うときは、数学に特化したWolfram GPTを使っていました。それが、いまや、ChatGPT単体で、数学が得意になってしまったのです。

 ええ? これって、生成AIがより万能になった……つまり、汎用AIに大きく一歩近づいた、ということなのでしょうか。

 この本(『スーパーAIが人間を超える日』)を書き始めた時から1年も経っていないのに、こうやって、「はじめに」で最新の状況を追記しないといけないほど、AIの進化速度は驚異的です。

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