
【鴻上さんの答え】
お麩さん。お麩さんの相談を読んで、僕はしばらく、パソコンの前で「うーん」と考え込んでしまいました。
お麩さんの相談は、お麩さん個人を超えて、「まさに今の問題」だと感じたからです。
お麩さんの感じている鬱屈や怒り、疎外感と、いわゆるエリートの人達が見ている世界と想像力のなさが、そのまま世界的な対立、つまり「分断」や「不寛容」の根っこだと、僕は感じているのです。
先日、イギリスの大学の最新研究で、「陰謀論を信じる人は『報復的な心理』、いわば『敵意を伴う反発心』を持っている可能性がある」という記事がネットにありました。
「陰謀論に傾倒する背景には、社会への不満や不安、疎外感があり、それが『報復的な心理』として表れる」というのです。
お麩さんは聡明な人なので、自分の感情をどうしたらいいのか考え、僕に相談する文章にして送ってくれました。
でも、激しい不満や怒り疎外感に振り回された人が、自分の気持ちの置き所として「陰謀論」を選ぶのは、分かる気がします。
「陰謀論」は、簡単に世界のカラクリを教えてくれて、手軽にエリート意識を与えてくれます。まだ「気付いてない人」を見下す満足感を得られるのです。
さて、お麩さん。こんなことを書いても、「だから、どうしたらいいのでしょう」と思いますよね。
でもね、「自分の抱えている問題は、私だけの問題じゃない。苦しんでいるのは私だけじゃない。私だけが変なんじゃない。それどころか、世界中で人々が直面している問題なんだ」と思うと、ほんのちょっと楽になりませんかね。
えっ?そうかもしんないけど、だからどうしたらいいのって?
世界中が苦しんでいる難問ですが、僕なりに考えると――解決のためには、まずは、自分の世界をちゃんと観察することだと思います。
最初に、いわゆるエリートの人達を観察するのはどうですか。