明るい自分を見てほしい
デリヘルの仕事を始め、稼いだお金を薬代にあてた。親に「車の保険代ちょうだい」「きょうだいの学費が必要。カンパちょうだい」などと言われ、学費のための奨学金を10万円ほど振り込むこともあった。
短大を卒業すると、繁華街のライブハウスなどでライブをする「地下アイドル」のグループに入った。アイドルは小さいころからの憧れだったが、生活は困窮した。1回のライブで、リハーサルや本番、物販と半日がかりで拘束される。チケットやグッズが売れても、手元には数千円しか残らない。交通費や食費、レッスン代を考えれば、お金は出ていくだけだった。それでも「明るい自分を見てほしい」という一心で続けた。親が東京までライブを見に来てくれたこともある。親が自分を応援して、認めてくれた。「愛してくれてるんだ」。うれしくて、余計がんばった。
お金は足りず、地下アイドルと掛け持ちでデリヘルのバイトも続けた。心身ともにへとへとだった。知人から紹介してもらった男性と意気投合し一緒に暮らし始めたが、殴られる、生活を全て管理されるなどのDVを受けた。このままでは殺されてしまうかもしれない。男性の紹介で働かされていた職場から、ドレス姿のまま逃げた。
疲れ切って命からがら戻った実家では、かつてと変わらず親からきょうだいの世話を頼まれ、男性から殴られたあざもあるのに、「そんなお金持ってるいい人と会えたのに、もったいないよ」と言われた。一日中寝てばかりで過ごし、自傷する気力も残っていなかった。それでもここにいたらいけないと、ひとり暮らしをしていたアパートに戻った。