ゴマフアザラシ/那須どうぶつ王国(栃木県)
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 動物たちの“幸福な暮らし”を実現するため、具体的にどうすればいいのか? こうした「環境エンリッチメント」という観点から、全国で個性的な動物園が増えています。そんな動物園の動物たちの日常を撮り続けている、動物・写真家のさとうあきらさんの連載「どうぶつサプリ」。今回は、動物の特徴のとらえ方についてです。

【「動物を撮る」をテーマにフォトギャラリーで紹介】

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 動物にはいろいろな特徴があります。その特徴をとらえて撮影すれば、すてきな作品を作ることが出来ます。そのためには、撮影する前に動物をよく観察しましょう。今回は例として、アザラシを取り上げます。アザラシの特徴はなんだろうかと、じっくり見てみます。すると、たくさんのことを発見できるハズです。実際に書き出してみましょう。

 目を開けて泳ぐ。体をくねらせて泳ぐ。泳ぐ時、推進力は後足と体の動きから得られ、前足は使っていない。後足は大きな扇のように開く。水中では、鼻の穴は閉じている。息をする時、鼻の穴が大きく開く。思っていたより速く泳げる。腹を上に向けて泳げる。回転しながら泳げる。かなり太い体なのに柔軟に曲がる。陸上では、ヒレ状になっている後足は歩くためには使わず、体全体を使って跳ねるように移動する。ヒゲが長い。目が大きい。耳タブがない。魚は頭から口に入れて食べる……などなど。

 観察の次は、体全体とさらに部位を撮影してみます。体の模様、顔、腹、目、耳、鼻、口、前足、後足……全身とそれぞれの部位を撮影することで、アザラシをさらに、しっかり見ることになり、同時に、どこを強調して撮影すればアザラシの特徴が表現できるのかが、わかってくると思います。

 このように、観察をしてから撮影をおこなうことで、アザラシへの新しい発見が増えていきます。アザラシを何回も何年も撮影している私でさえ、知らない一面が見えてくるのです。まさに、これが動物を撮影する魅力だとわたしは思っています。そんな自分の新しい発見を写真でとらえ続けていけば、アザラシの特徴がすてきな写真表現となってきます。

 今回は、具体例としてアザラシを取り上げましたが、他の動物を撮影する時も、もちろん観察をしてから撮影をおこないます。わたしは、「動物・写真家」なので、動物を撮影する時の話をしていますが、どんな被写体でも同じことです。「何を主役にして、どこを切りとって写真を作るか」を、観察した結果から自分が適正だと思う時にシャッターを切ります。この「観察してから撮影する」を意識的に繰り返しおこなっていくと、観察時間は短くなっていきます。最終的には、被写体を見る、観察を終える、シャッターを切る、という一連の動作が瞬時に出来るようになることでしょう。

 さて、実際の撮影を始めてみましょう。アザラシの特徴の中で、今、撮影が出来るのは、どの場面なのかを考えます。水の中に居るならば、泳ぐ場面が撮れるでしょう。陸上に居るならば、特徴的な部位を主役と考えて、その部位を強調するような写真を撮影します。「あ、今のは良い場面だったのにな…」と撮り逃がすこともあるでしょう。そういう良い場面があったら、ともかく待ちましょう。いつかは、同じような場面が訪れるものです。その瞬間が撮影出来るように用意をして待つのです。撮りたい場面を撮れるまで撮影を続ければ、必ず自分の思い描いた写真が撮れます。これが出来るようになれば、後は、時間と回数をかけるという当たり前のことを一つひとつ実行していくだけです。これが、一番確実に写真の腕があがる方法だとわたしは感じています。(写真・文/さとうあきら)

さとうあきら
動物・写真家。写真を見たみなさんが、「動物園や水族館で暮らしているすてきな動物たちに直接、会いに行って欲しい!」という願いを込めて撮影しています。
著書に『動物園の動物』(山と渓谷社)、『みんなのかお』、『こんにちはどうぶつたち』(福音館書店)、『おしり』『どうぶつうんどうかい』(アリス館)ほか多数。季刊『サイエンスウィンドウ』(科学技術振興機構)で、「動物たちのないしょの話」も連載中