源田の定位置を脅かす西武の滝澤(日刊スポーツ)

「すごい選手になる」と目を奪われた

 ファームで対戦した他球団の首脳陣は、滝澤のプレーを見て衝撃を受けたと話す。

「無名の高校から育成枠で入ってきて存在を知らなかったのですが、一目見て『すごい選手になる』と目を奪われました。打球に追いつくスピードが並外れて速く、難しい体勢で捕球しても強肩で内野ゴロにする。身体能力に頼ったプレーでなく、一つ一つのプレーが丁寧なんです。西武のコーチ陣の指導の影響も大きいと思います。プレーヤーのタイプとしては今宮健太(ソフトバンク)、矢野雅哉(広島)に近い。ゴールデングラブの常連になれる逸材です。打撃もスイングに癖がないので、実戦で使い続ければ対応できると思います」

 西武の遊撃は源田が入団1年目の17年から守り、7年連続ゴールデングラブ賞を受賞するなど不動のレギュラーを続けてきた。21年の東京五輪や23年のWBCなど、侍ジャパンの一員としての活躍も多い。だが、源田も32歳となり、後継者の育成が西武のポイントになっている。

 西武は昨秋のドラフトで遊撃の補強にこだわる姿勢を見せた。1位でアマチュア球界No.1遊撃の明治大の宗山塁(楽天)を指名。5球団の競合となってくじを外すと、「外れ1位」で高校球界を代表する遊撃の石塚裕惺(巨人)を指名。再びくじ引きで敗れると、「外れ外れ1位」で遊撃の守備に定評がある金沢高の斎藤大翔を指名し、獲得した。

「源田が球界を代表する名遊撃手であることは間違いないですが、近年は盗塁数が減り、守備範囲が以前より狭くなっている。遊撃は体に掛かる負担が大きい側面もあります。源田は今年、開幕前に下半身のコンディション不良を発症し、開幕1軍入りしたものの、16試合出場で打率.222と打撃の状態が上がっていなかった。右足の故障で登録抹消されましたが、そこまで重症ではないと聞いています。それでも西口文也監督が治療に専念させたほうがいいと決断できたのは、滝澤の存在が大きかったと思います」(スポーツ紙記者)

 絶対的レギュラーが、故障している間に台頭した若手にポジションを奪われるケースは過去にある。巨人の二岡智宏(現巨人ヘッド兼打撃チーフコーチ)は新人の99年から遊撃の定位置を守り続け、チームの中心選手だったが、08年に故障で離脱すると、その間に高卒2年目の坂本勇人が代役として奮闘。二岡は同年オフに日本ハムにトレード移籍した。

 西武は石毛宏典、田邊徳雄、松井稼頭央、中島宏之、源田と名遊撃手を次々と生み出してきた歴史がある。まだまだ攻守の総合力で言えば源田が上だが、滝澤は守備だけでなく打撃でも成長の跡を見せている。源田が意地を見せて遊撃で輝き続けるか、成長著しい滝澤が定位置を奪取し、偉大な先輩たちの系譜に名前を連ねられるか――。今年の西武はそんなポジション争いにも注目したい。

(今川秀悟)

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