洗濯槽の外側にある「手回しローラー」で脱水
おばあちゃんの家は、戦後まだ貧しい時代に浜で塩田を営んでいた祖父が、海岸に立っていた古い家を半分だけもらって移築したらしく、玄関の反対側の家の壁は窓もなく切り立っていました。とにかく古いものがたくさんある家でした。
お風呂はもちろん五右衛門風呂。焚き口が家の中の台所の端っこの土間のところ(お勝手口)にあり、祖母が夕ごはんを用意している横で祖父がお風呂を焚いていました。
五右衛門風呂は全部が鉄の釜なので、入る時には底に踏み板を沈め、周りの鉄の風呂釜の壁にお尻など体が触れないようにそーっと入ります。もしどこか触れようものなら「あちちち!」と痛い目に(笑)。これが、入っている時に追い焚きされると熱くて熱くて「おじいちゃん、今焚くのやめて〜!」とよく叫んだものです。
お勝手口の外には小さな畑があり、祖父はニラに植木鉢をかぶせて黄ニラを作ってたなあ(今考えると日光を当てずに育てる軟白栽培ですね)。おなかが弱いくせにお酒好きな祖父の朝ごはんは、ニラやサツマイモのおじやが定番でした。
五右衛門風呂のお風呂場の脱衣所には小さなかわいい洗濯機がありましたが、脱水機能はついていませんでした。どうするかというと、洗濯槽の外側に手回しローラーがついていて、ぬれた洗濯物を一枚一枚ローラーに挟み、ぐるぐる回して水を絞るのです。時間はかかりましたが、それはそれでまた楽しく、「大人になったらぐるぐるいっぱい回したいなあ」と、夢見ていたのを思い出します(笑)。
おじいちゃんはなかなかおしゃれな人で、朝起きたらひげ剃り用のカップにシャボンを泡立て、ブラシで顔に塗ってひげ剃り。その温かいシャボンの泡を顔につけてもらうのが大好きでした。
そして、居間の真ん中には掘りごたつがあり、祖父の定位置にはたばこ盆。灰の中に埋まったたばこを取り出してお掃除するのも大好きでした。そのことを思い出すと、今でもあの懐かしい香りが鼻腔(びくう)の奥によみがえります。