
ゆずをゲストに迎えた「わっかフェス」が3月、富山で開催された。地元の伝統芸能と、横浜の大学生。石川からは御陣乗太鼓も参加し、2千人の観客が、熱狂した。AERA 2025年4月21日号より。
【写真】「楽しかったです!」と声を揃える横浜国立大学「みんけん」のみなさん
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サーサーノサー ドッコイサーノサー──。
編み笠を目深に被った男女が、唄、三味線、胡弓、太鼓、囃子に合わせて踊る。哀調あふれる調べと、幻想的で優美な舞。会場を埋め尽くした2千人の観客は、幽玄な舞に魅せられた。
「踊っている時も手が震えるくらい緊張してたんですけど、みんなで踊るのがこんなに楽しいんだって思いました」
横浜国立大学の藤原彩乃さん(2年)は、声を弾ませる。
3月26日、郷土芸能や音楽、祭りのパワーで地域を盛り上げることを目的とした「わっかフェス」(三菱商事、朝日新聞社主催、北陸朝日放送特別協力)が、富山市のオーバード・ホールで開催された。
このフェスは2023年にスタート。最初の2年間は秋田市で開かれ、大学生らとアーティストが踊りや歌を披露してきた。北陸では初の開催となった。
元禄時代からある踊り
今回は、富山県から「南砺平(なんとたいら)高校郷土芸能部」「富山県民謡越中八尾おわら保存会」「新湊・二の丸町獅子方若連中」の3団体と、石川県から「御陣乗太鼓(ごじんじょだいこ)」の計4団体が参加。そこに、横浜国立大学のサークル「みんけん(民謡研究会合唱団)」のメンバー12人が加わった。
冒頭の藤原さんはその一人。横浜市の生まれで、中学生の時に「和太鼓部」に所属。大学に進学すると、和太鼓を演奏している「みんけん」を知り、飛び込んだ。だが、普段、みんけんの活動は和太鼓と篠笛(しのぶえ)が中心。踊りはまったくの素人だった。
「踊りなんてできるのだろうかって、不安でした」
みんけんが踊ったのが、富山市の南西部にある八尾町(やつおまち)で踊り継がれている「おわら節」。立春から210日目の9月1日から3日まで行われる行事で、「おわら風の盆」と呼ばれ、江戸時代の元禄時代から、300年余踊り継がれてきた。現在、八尾町には11の地域におわら保存会の支部がある。みんけんの学生たちは支部を束ねる「富山県民謡越中八尾おわら保存会」のメンバーたちと一緒に、おわら節の中で最も古くからある「豊年踊り」を舞った。五穀豊穣を祈念し、種まきや稲刈りといった農作業の動きを、手や足の所作で表す踊りだ。