23年のWBC決勝で2番手として登板し、米国打線を抑えた戸郷

プレミア12から見られたシーズンの疲れ

 昨年11月に開催されたプレミア12では、メジャー組が参加せず、戸郷は高橋宏斗中日)とともにエース格として期待された。だが、決勝の台湾戦に先発した戸郷は5回に2本のアーチを浴びて4失点で敗戦投手になった。侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者が言う。

「シーズンの疲れはあったと思います。初回から直球の制球が定まらず、状態が悪かった。2本目の3ランは決して悪い球ではなかったけど、球威が落ちていた。試合後は優勝できなかった責任を背負い込んでいましたが、戸郷が悪いわけではない。真面目な性格なので心身を消耗してしまうのが心配ですね」

 巨人では、昨年見事に復活し、最多勝に輝いた菅野智之がオリオールズにFA移籍したことで、戸郷の責任感はさらに増しただろう。戸郷は2月の春季キャンプから決していい状態ではなかったが、元々スロースターターの傾向があるため、開幕にはきっちり合わせてくると見られていた。だが、大量失点の登板が続いてしまった。

 巨人OBは複雑な表情を浮かべる。

「本人は早く1軍復帰したいでしょうけど、心と体をリフレッシュしてフォーム固めからやり直していいとも思うんですよね。入団してから明らかに投げすぎだし、1カ月はファームで様子を見てもいいように感じます。25歳と若いし、将来のある投手です。大きな故障につながる前にストップをかけられたと前向きに考えたほうがいいです」

呼吸が合う捕手と組む選択肢も

 投手は繊細だ。コンディションやフォームにズレが生じると、立て直すのが非常に難しい。西武のエース高橋光成は21~23年に3年連続2ケタ勝利を挙げてメジャー挑戦が現実味を帯びる位置まで駆け上がったが、昨年は0勝11敗、防御率3.87とまさかの結果に。1つの白星が最後まで遠く、プロ10年目で初の未勝利に終わった。

 投手タイトルを総ナメにしてきた巨人の菅野も23年は4勝8敗に終わり、「限界説」がささやかれた。だが、昨年は15勝3敗と復活、自身3度目のMVPにも輝き、4年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。
そう考えると、先発ローテーションで稼働してきた戸郷に不調の時期が巡ってきたことは想定外とも言い切れない。

「菅野の復活の背景として、阿部慎之助監督が小林誠司に専属マスクをかぶらせた起用法も大きかった。菅野を知り尽くしている小林がリードすることで、テンポの良さを取り戻して投球に余裕ができた。今季、戸郷はFA移籍してきた甲斐拓也とバッテリーを組んでいますが、呼吸が合う大城卓三を捕手で起用する選択肢も考えていいと感じます」(前出の巨人OB)

 戸郷は久保康生巡回投手コーチとマンツーマンでフォームを見直しているとも報じられている。開幕してまだ3週間も経っていない時期だけに、万全な状態を取り戻してから1軍に復帰しても決して遅くない。今後の野球人生を見据えると、焦りは禁物だ。

(今川秀悟)

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