鴻上尚史さん(撮影/写真映像部・小山幸佑)
この記事の写真をすべて見る

 結婚を経験してから、大好きだった仕事への情熱を失ってしまったと話す33歳女性。友人の活躍を他人事のように思えてしまい、情熱を失ったことを後悔する日が来るのではないかと不安になるという。そんな女性に、鴻上尚史が「大切なことの変化」だと伝えたその真意とは。

*   *   *

【相談253】

結婚後、仕事への向上心や情熱がなくなってしまった自分にがっかりしています(女性 33歳 ブランカ)

 出産してから仕事への向上心や情熱がなくなってしまい、悩んでいます。

 1 年半前に子どもを生みました。やんちゃで手はかかりますが夢のようにかわいく、笑っているところを見ると幸せです。夫は結婚前から私より家事が得意でしたが、特に産後はものすごく家のことをやってくれています。夫のおかげで育児のストレスは少なく、睡眠や休みもしっかり取れています。順風満帆に見えますが、出産してから以前のような仕事への向上心や情熱がなくなってしまい、悩んでいます。

 以前は活躍している同世代の友人を見ると「悔しい」「負けずに頑張るぞ」と思えたのに、いまは他人事のように「すごいなあ」と思うだけです。仕事に励みたくてもどうせ育児で時間が取れないからと、気持ちに蓋をしている部分はあります。でも、それ以上にそもそものやる気や向上心が薄くなっているのを感じます。難関大学を出て大手企業に就職、本業の傍ら憧れだったイラストの副業を始め、地道にスキルと収入をあげてイラスト一本で独立しました。「向上心は何より大事」「努力は正義」と信じてここまできました。

 将来に向けた努力をせず、のんびり幸せな生活していると、自ら人生を停滞させている気になり焦ります。イラスト業界は競争が激しいのに、このままでは仕事がなくなるのではないか、あの時もっと仕事を頑張っていればと後悔する日が来るのではと不安です。自分がやる気をなくすことで「やっぱり女性は子どもを産むと仕事をしなくなるんだ」と周囲に思われるのも嫌です。

 ウサギとカメのウサギになった気持ちですが、もう一度走り出せません。これが老いなのでしょうか。どうすればよいのでしょうか。

次のページ