北海道の東千歳駐屯地で行われた陸上自衛隊のレンジャー養成訓練の様子
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 陸上自衛隊の精鋭である「レンジャー隊員」について、一部の部隊を除き、少なくとも今年度中の養成訓練中止が発表された。現代戦に対応できるよう教育内容を見直すことが主な理由だというが、森下泰臣陸幕長は3日の会見で、「(訓練中の死亡)事故が続いていた状況もあり、この機会にしっかり安全や健康管理を十分反映して新しい教育をしたい」と述べた。陸自で最も過酷とされる「レンジャー訓練」とは。元レンジャー隊員の男性は「訓練中は常に命の危険を感じていた」と証言する。

【写真】地獄の「ハイポート走」にも表情を変えない前田さん

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 取材に応じてくれたのは、自衛隊について発信するYouTubeチャンネル「バトラー軍曹」を運営する、元レンジャー隊員の前田健太さん(仮名)だ。前田さんは2010年から20年まで自衛隊に在籍し、16年にレンジャー資格を取得。その後、教官を補佐する「助教」の立場でレンジャー候補生を指導した経験も持つ。

 有事の際に敵地に潜入、襲撃するなど“ゲリラコマンド”の技術を習得するレンジャー隊員だが、多くの場合、資格取得後は元々いた部隊に戻り、一般隊員とともに活動する。前田さんの在籍当時はレンジャーの資格をとっても待遇面の変化はなかった。

 それでもあえて厳しい道を志した理由について、前田さんはこう振り返る。

「同じ部隊のレンジャー隊員が、ヘリコプターからロープで降下するなど、一般隊員にはできない高難度の訓練をこなす姿に憧れました」

 前田さんによると、約6000人の部隊のうち、レンジャー志願者は例年100人弱。そこから体力や運動能力を試す素養試験を経て、30人ほどが候補生として選ばれたという。

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