さらに、気になるのはアジアの中でも、日本の株式市場の下落が目立ったことです。円安の恩恵を受けてきた輸出関連企業の下げが顕著で、投資家の危機感が伝わってきました。9日に相互関税の一部について、90日間、一時停止すること発表したが、世界の株式市場の乱高下は続いており、予断を許せません。
こうした状況下なので、日本はアメリカとの交渉において明確なリーダーシップを発揮する必要があります。2018年に下落した当時は、安倍晋三元総理や甘利明氏が前面に立ち交渉を進めましたが、現在は「誰が日本の交渉の顔か分からない」といった批判が強まっており、国民や企業の不安が広がっています。閣僚会議をするのはいいのですが、なんだか全力で責任を分散したいだけのような気もします。「日曜討論」では、自動車産業の社長から、「日本政府は、あまりにものんびりしすぎている!」との批判も出ていました。
リグ稼働は上がっていない
多くのシンクタンクの試算では、もし関税が恒久化すれば日本のGDP(国内総生産)に約0.2〜1%のマイナスの影響が出るとの指摘もあるため、アグレッシブな交渉姿勢を示すことが急務です。過去の対抗措置や具体的な数値や交渉材料を前面に出すことで、交渉力が大きく向上する希望はあると私は思っています。
日本が交渉の場でアピールすべき点は、単に経済的なダメージを懸念する姿勢にとどまらず、より実効性のある材料として「米国債の購入」や「アラスカのLNG(液化天然ガス)開発の協力」などを挙げることも考えられます。というのも、トランプ氏は、ドルの基軸通貨体制の維持と同時に、ドル安を誘発することで米製造業の競争力向上を狙っています。この矛盾する政策の中で、アメリカは日本に対して米国債の安定買い入れをしてほしいというインセンティブを持っていると考えられます。また、トランプ氏は「アメリカで石油もガスも掘りまくる!」と宣言している割には、アメリカ国内のシェール掘削のリグ稼働は上がってきていません。アメリカや日本のインフレ対策としてのLNG開発の重要性を交渉カードとするのも有効かもしれません。