孫は祖父母の期待通りには育ってくれませんが、期待もしていなかった優しさや思いやりを見せてくれることもあります。期待通りでない性格や才能だったとしても、それをそのまま受け入れる、そのままで愛する。これこそが、祖父母が孫に与えることができる最高の愛です。

「言葉の品格」を伝えよう - 社会人としての基礎を築く
 人間が社会人として生きていくうえで、一番大事なスキルの一つが言葉です。きちんとした日本語で表現することができ、相手の言葉を理解することができるといった相互のコミュニケーションを成立させるのが社会人の第一歩。言葉を使うことができるのは人間としての基礎力です。孫にも少しずつ言葉を使うスキルを身に付けさせましょう。
 孫にいつまでも赤ちゃん言葉で話しかけてはいけません。孫が幼児語で話しかけてきても、ちゃんとした普通の言葉で返すようにしましょう。孫が自分のことを「ぼくちゃん」とか「あーちゃん」とか言っていても呼びかけるときは哲夫君、とか、あきこさんとか名前で呼びかけましょう。それは心理的に自立するうえでの第一歩になります。
 幼児の頃は「ごはん」と言うだけで十分ですが、4、5歳から小学生になるまでには「ごはんをください」「ごはんが食べたい」と言えるようにしましょう。子どもだからと大目に見て放置していると、大人になっても「メシ、風呂、寝る」などとしか言えない人になってしまいます。

悪口は言わず、ほめる力を磨こう - 孫の自己肯定感を高める
 祖父母が心しなければならないのは、絶対に孫の前で人の悪口を言わないことです。悪口は相手を傷つけるだけでなく、言っている当人の品格を卑しくし、聞かされている人の気持ちを暗くします。
身近な自分の家族でもつい悪口というか、「だらしない」といった批判や愚痴を言いそうになりますが、自分の親や兄弟の悪口を聞かされる子どもはうれしい気持ちにはなりません。
 ましてや子ども(息子・娘)の配偶者、その両親に対する悪口は、絶対に子どもの前で言ってはいけません。判断力のない子はそれを「おばあちゃんがこう言っていたよ」と当人にそのまま伝える場合もありますし、そうでなくても「こちらのおばあちゃんは、あちらのおばあちゃんが嫌いなんだ」と思ってしまいます。一時の感情に駆られて余計なことを孫に対して言わないように心しましょう。
 祖父母が孫を全面的に受け入れていることを伝えるには、何よりも言葉で孫をほめることです。ほめられれば孫はうれしいだけでなく、自分の長所を自覚し、自分に自信を持ち、自己肯定感を高めることが出来ます。
 しかしほめるのは意外と難しいのです。誰でも心にもない上っ面だけのお世辞を言われてもうれしくありません。誰でも知っている出身校(在学校)や肩書きをほめられても、それに対して心は動かされません。それは子どもも同じです。
 いいところを見つけてほめてくれる。努力している行動を見つけてほめてくれる。そして自分はよいと思っていてもほかの人から評価されていなくて自信が持てない部分をほめてくれるような場合です。ほめるためには相手をよく見ていなければなりません。

《坂東眞理子先生による『祖父母の品格』の講演会が、新宿の紀伊國屋ホール(紀伊国屋新宿本店4F)にて、4月25日(金)19時から開催予定です。チケットは事前購入制。チケット購入は、キノチケオンラインにて≫
 

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