広末涼子さん
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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、「お騒がせ女」について。

【写真】この透明感は今もかわらない?デビュー直後のピュアな笑顔

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 胸が痛い。

 広末涼子さんのことである。

 高速道路で追突事故を起こし、搬送された病院でパニックに陥り、看護師にけがを負わせたとして警察官にその場で逮捕されたという。

 2年前、テレビからネットメディアまでがこぞって彼女の私生活を暴き、恋人とのやりとりが暴露され、当時の夫には変な記者会見をされ、まるで“当然のこと”のように広末さんはほぼ全ての仕事を一気に失った。最近になってようやく芸能の仕事に復帰しはじめていたさなかの交通事故だ。日本全国から一斉にボコボコに殴られた経験のある人にとって、それは「ただの交通事故」ではなかっただろう。パニックをひきおこして暴れるほど、不安に押しつぶされたのだろうか。広末さんに、何が起きたのだろう。

 婚外恋愛をした広末さんに「世間がした」ことは、どれほどのことだったのか、考えさせられる。広末さんは若い頃からその行動を「プッツン」と名付けられてきたが、つくづくこの世は「お騒がせ女」を消費したがり、面白がり、叩きたがるものである。「お騒がせタレント」と名指しされる有名人の多くが女性であるのも、そもそも、この社会が男と女に違うルール(特に性に関して)を敷いているからだ。特に婚外恋愛をした女性に対しては、制裁としか言いようのない攻撃がされる。性的なことをにおわせ、面白がり、二度と表社会に立てないのではないかと怯えさせるほどの烙印を押す。「お騒がせ」と一度でも認定された女性には、まるで何を言っても、何をやってもいいかというように。

 この数日間、ちょうど『神近市子の猛進 婦人運動家の隘路』(石田あゆう著 創元社)を読んでいた。“ちょうど”というのも変な言い方だが、神近市子といえば、超ビッグな元祖お騒がせ女である。

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