
先週配信の本コラムで、立憲民主党の江田憲司衆議院議員が立憲とその他野党の衆議院議員を集めて51人で内閣不信任案を提出すれば、他の野党議員も賛成せざるを得ないという話を書いた。
また、その前提として、企業・団体献金の禁止について、自民党の法案と公明党・国民民主党による提案概要(いずれの案も禁止には反対)と立憲などによる禁止法案の3勢力に分かれているため、法律が改正される可能性は極めて低いという見通しも述べた。現状はさらに事態が悪化し、国民民主が、同じ野党である立憲ではなく、自民との協議を始めていることから、禁止法案が成立しないだけでなく、企業・団体献金を温存して少しだけ公開するというとんでもない法案が成立してしまう可能性まで出てきた。
しかし、衆議院の「政治改革に関する特別委員会」の委員長は立憲の渡辺周議員である。そのため、仮に自公国3党でまとまっても、採決にかけてその法案を通すことは考えられないと私は予想していた。
ところが、3月31日の予算委において審議を打ち切り法案の採決を行うことを同委の理事会で自公国が提案したそうだ(その場合野党法案も同時に採決される)。採決を求める動議が委員会で提出されれば、24年度内に結論を出すという与野党の申し合わせがあるため、委員長は動議についての採決を強いられ、自公国による過半数でこの動議が可決されれば、公明と国民民主は、少しでも前に進めることが大事だからという理屈で自民の法案に賛成してとんでもない骨抜き法案が可決される恐れがあった。そこで、これを避けるために、立憲などが抵抗して、委員会の開会そのものをとりやめることになったそうだ。私は、先週のコラムを書くときに、迂闊にもそういう事態を想定していなかった。
厳密には、審議が尽くされていないとして委員長が採決の動議を却下することもできそうだが、却下しても、その後審議を重ねるたびに動議提出と却下が繰り返されれば、委員長が野党側の肩を持って採決を妨害しているという主張が成立する。それを根拠に、本会議で特別委の委員長解任動議を出して、自公国の多数で可決すれば、委員長を自公国の選んだ議員に代えて法案を特別委で可決することもできる。
そこまで行かなくても、あと数日審議し、その過程で採決動議とその却下を繰り返すうちに、委員長が追い込まれて採決せざるを得なくなり、衆議院を通過する可能性も十分にある。参議院では元々自公過半数なので、夏の参院選を前にした国民民主の議員が造反しても法案が通ってしまう。
特に注意が必要なのは、立憲から見ると、骨抜きの法律改正になれば、それを参院選の争点にできると考え、あえて採決させる作戦を取ろうとする誘因がある点だ。そうなると、いくら選挙で批判の対象にしたところで、選挙後の衆議院では、同じことの繰り返しで、これ以上の改正が行われなくなる可能性がある。