「消費税増税派」「財務省の傀儡」というイメージ

 やはり、選挙のテーマは物価高対策になるのは確実で、具体的には、消費税の減税を行うか否かが大きな争点になる。野党では、立憲を除き、いずれも何らかの形で消費税の減税または廃止を主張している。一方の立憲では、江田氏らが消費税減税を強く訴えていたのに、それを野田氏が葬り去ったということになれば、「野田氏の立憲」には明らかに逆風になる。国民民主やれいわにさらに票を奪われて立憲一人負けの可能性すら出てくる。

 さらに、石破首相は内心では食料品の消費税減税に賛成だ。3月28日の参議院予算委員会でも、立憲の川田龍平議員が食料品の消費税減税を求めたのに対して「一概に否定するつもりはない」「物価高対策の一つの対応として考えられないことではない」と思わず本音を漏らして話題になった。

 その後、財務省や自民党からの圧力を受けて、消費税減税を否定しているが、石破政権生き残りのために、最後は食料品での減税(例えば8%を5%になど)を打ち出そうと考えて準備をしているはずだ。

 そういう事態を想定すれば、本来は、石破首相が消費税減税を強く否定している今のタイミングこそ、不信任案を提出する良いタイミングである。その際、立憲も食料品非課税などの減税案を党として打ち出す必要があるのは言うまでもない。石破首相が否定したばかりのタイミングで立憲がこれを出せば、石破首相もすぐにそれを真似るということはできない。立憲の支持率回復のきっかけになるだろう。いっそのこと、代表を野田氏から江田氏に代えてこれを出せば、支持率はかなり高くなるのではないかとさえ思う。(ちなみに、私自身は増税を否定するわけではないが、現状では食料品非課税を実施し、次の段階で、円安と値上げなどでボロ儲けしている大企業と富裕層への増税を行うべきだと考えている。江田氏もそうした減税と増税を時間差で実施する緻密な議論を展開している。ただのばら撒きで人気取りを狙う他の政党や政治家と違う点が、私が江田氏を評価しているところだ)

 いずれにしても、立憲は早く「消費税増税派」「財務省の傀儡」という野田氏のイメージを払拭して、減税案を正式に打ち出すべきだ。石破首相が減税に舵を切る前にやるためには、5月の連休明けくらいがタイムリミットではないだろうか。早めに出して、それを石破首相に否定させ、「消費税減税をめぐる、石破自民対立憲」という構図を国会審議などを通じて国民に植え付ける必要がある。

 この作戦を実行するのは簡単なはずだ。江田氏の他にも消費税減税を求める有力な立憲議員はいる。党内ではかなり大きな勢力だ。執行部の中でもこれに傾く有力議員が出てきている。しかし、野田氏の反応は極めて鈍い。

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