立憲民主党の野田佳彦代表

野田氏は内閣不信任案を出せるのか?

 試しに立憲のある議員にこの話を振ってみると、案の定、「ダメな法案を無理に自公国で通してくれれば、参院選がやりやすくなる」という返事が返ってきた。先週指摘した法律改正ができないリスクだけでなく、骨抜き改正になるリスクも十分にあるとみた方が良い。

 あらためて冒頭の話題に戻るが、野田佳彦立憲代表は、会期末まで内閣不信任案を提出できない可能性は高い。立憲の支持率は低迷したままで、いま衆議院の解散総選挙になれば、国民民主とれいわ新選組に自民の議席減少の分をまるまる取られてしまうと予想される。支持率低迷が続けば(その可能性が非常に高いが)野田代表は会期末でさえ不信任案を出せないかもしれない。

 だとすれば、なるべく早い段階で、「たとえば」江田憲司衆議院議員が立ち上がって、立憲のみならず野党議員を50人集めて不信任案を出してはどうかということを先週のコラムに書いたわけだ。

 その後、江田氏に近い立憲の議員に聞いてみると、「江田さんはそう考えているのかな」と懐疑的だった。

 そこで、思い切って江田氏本人に電話して聞いてみた。

 すると少し意外な返事が返ってきた。江田氏は、会期末に不信任案を出さない選択肢は野田代表にはないと即答した。毎年出しているのに、今年だけは出さないとなれば、それこそ自民との大連立を狙っているのではないかなどと言われて立憲は参院選で大敗する。したがって会期末には、不信任案は絶対に出すしかないとみているとのことだった。

 確かに、普通に考えればそうなるのだろう。

 そして、仮に不信任案が出れば、これは先週も書いたのだが、そのタイミングがいつであれ、野党がこれに反対するのは困難だ。不信任案反対は石破茂政権への「信任」を意味するので、選挙前にそういう行動を取るのは自殺行為になる。

 では、仮に会期末に不信任案を出して可決され、衆議院が解散されたら立憲は選挙で有利になるかというと、そうはならないというのが、私の見方だ。ぐずぐずしているうちに会期末を迎え、出さないと批判されるからと仕方なく出した不信任案に過ぎないと見透かされてしまうというのが理由の一つだが、もう一つ理由がある。

 参院選のテーマは何になるかというと、ズバリ、物価高対策だ。企業・団体献金禁止が大きな争点になるという人もいるが、それはないと私は見ている。なぜなら、立憲の案も組合などが作る政治団体については献金を認めるという例外を容認していて、それを抜け穴だと国民民主などに批判されており、また、世論調査では、全面禁止よりも禁止しないで公開するというやり方の方が良いという人も増えているからだ。立憲案が素晴らしくて自公国の案はとんでもない案だと言っても、話がややこしくて一般の人の心に響くことにはならないだろう。

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