立憲は石破政権以上の危機的状況

 実は、参院選の公約を作る作業が立憲内で進んでいるのだが、消費税の減税について党としてはまだ議論していないと聞いて、私は心底驚いた。日頃、外に向かって「熟議と公開」というお題目をもっともらしく唱えている野田代表だが、こと党内の議論の進め方を見るとこれとは全く正反対ではないか。こうした点でも野田代表への不満は高まっている。

 私が得た情報では、今、立憲内では江田氏らの勢いが増し、消費税問題を平場(ひらば。若手を含めて全議員が参加できる場)で議論する機会を4月中に設定する動きが本格化しているそうだ。平場の議論になれば、選挙区で有権者の声を日々聞いている議員たちから、減税を求める声が多く出ることは確実だ。私が知る中堅や若手の議員たちも、このままでは立憲は終わるというくらいの危機感を持っている。

 野田氏はこの案に反対を続けようとするかもしれない。しかし、今のまま何もせず、支持率低迷を放置して良いはずがない。消費税減税がダメというなら、代替案を示し、それによって国民の支持が高まるということを示すべきだ。

 無策のまま動かず、「自分が考える正論」を述べ続けるというのが野田氏のスタイルだ。代表になってからもこれだけはブレない。絶体絶命かと思われた石破政権は、野田代表の無策のせいもあり、2025年度予算を24年度内に成立させ、企業・団体献金についても、今人気絶頂の国民民主を取り込み、見せかけの改正案で逃げ切る作戦だ。

 国民民主は、依然として「手取りを増やす」という庶民派代表として絶大な人気を維持し、れいわも同様に元祖庶民派のブランドで躍進を続けそうだ。日本維新の会は立憲と共に低迷していたが、予算案に賛成する取引の中で、税金よりも重い社会保険料の負担軽減のために自公との協議を始めて存在感を示し始めた。

 立憲は、いろいろと提案をしているが、野田氏が動かないために、マスコミの関心も集まらず、鳴かず飛ばずのままジリ貧の状態が続いている。石破政権以上に危機的状況にあると言っても過言ではない。野田氏は立憲の「疫病神」だという声さえ聞こえてくる。

 だが、立憲を簡単に見限るわけにはいかない。政権交代をして、旧来の自民党政治を変えるためには、立憲が軸になった野党政権を作ることがどうしても必要だ。国民民主の勢いが続けば、自民政権の延命になり、その間に立憲が国民民主に野党第1党の座を奪われるという展開もないとは言えない。そうなれば、庶民に寄り添うという姿勢で国民を欺きながら、戦争に備える軍事国家日本を目指す政権が続くことは確実だ。

 4月中に立憲内で議論が進み、ゴールデンウィーク明けに、変身した立憲の大胆な物価高対策案が提示されることを期待したい。もし、これができなければ、立憲のことを諦め、別の道を探すという国民が増えるだろう。

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