2月のキャンプで久保コーチ(左)から投球フォームの指導を受ける田中(日刊スポーツ)

5回までリードすれば白星がついてくる

 巨人では、昨年最多勝、MVPに輝いた菅野智之が海外FA権を行使してオリオールズに移籍。昨年果たせなかった日本一奪取のために先発陣の強化が必要だった。球団側は田中が復活できると判断し、久保康生巡回投手コーチが春季キャンプからつきっきりで指導に当たってフォーム改造に取り組んだ。横振りだった体の使い方を縦振りにする。言葉にすると簡単だが、実際に矯正するのは非常に難しい。田中は、プロ19年目でのフォーム改造に真摯に取り組み、球の強さを取り戻しつつある。

 パ・リーグ球団の30代のベテラン投手はこう指摘する。

「フォーム改造は一歩間違えると、さらに悪化する危険性があります。でも田中さんは器用でバランス感覚がいい。球の強さが昨年より戻ってきているように感じましたし、スプリット、スライダーの制球力を取り戻せばまだまだ勝てるんじゃないですかね」

 田中の初登板を映像で見たセ・リーグ球団のスコアラーもこう分析する。

楽天時代の昨年と比べて劇的に良くなったとは感じないですが、ピンチでスイッチが入った時の投球はさすがでしたね。直球が最速149キロ出ていて、きっちり制球されていた球もありました。暖かくなったら球速がもっと出ると思います」

 田中将の復活劇を見ると、巨人への移籍が正解だったといえるだろう。巨人には強力なリリーバーがそろい、必勝パターンが形成されている。3日の試合でも、8回は大勢、9回はマルティネスが、中日打線を完璧に抑えた。この日の登板のようにリードする展開で田中が5回を投げ切れば、白星がつく可能性が高くなる。通算200勝達成の期待がかかる田中は、自身に合った球団に移籍したと言える。

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