
横浜の19年ぶり4度目の優勝で幕を閉じた第97回選抜高校野球。ドラフト候補となる選手にとっては今年最初の大きなアピールの場となったが、果たして評価を上げた選手は誰だったのか。プレーぶりなどから探ってみたいと思う。今回は投手についてだ。
【写真】龍谷大平安の甲子園優勝投手で侍ジャパンでも活躍したのはこの選手
大会前に最大の注目選手と見られていた石垣元気(健大高崎)は練習試合でわき腹を痛めた影響で先発を回避したが、それでも改めて能力の高さを見せた。1点をリードした9回裏ツーアウト一塁から登板した2回戦の敦賀気比戦では5球続けて150キロ以上のストレートを投げ込んで試合を締めると、続く準々決勝の花巻東戦では選抜大会史上最速となる155キロもマーク。アベレージでもストレートは150キロ前後を記録しており、そのスピードは歴代の高校生投手でも屈指の存在と言える。
178cm、78kgと投手としては決して大柄ではなく、フォームもそこまで反動をつける動きが大きくなくてもこれだけのスピードボールを投げられるというのが最大の魅力である。敗れた準決勝の横浜戦では失点した後に変化球を上手く使って立て直すなど、昨年と比べてピッチングの幅が広がったこともプラス要因だ。故障の影響もあって4月に行われるU18侍ジャパン候補の強化合宿には選出されなかったが、現時点で高校生投手の目玉という評価は不動という印象だ。体調が万全の状態でどんなピッチングを見せてくれるか今から楽しみだ。
石垣に次ぐ存在と見られていた阪下漣(東洋大姫路)も肘を痛めてわずか1回で降板。状態によっては長期離脱となる可能性もあると見られている。元々進学の可能性が高いという話もあっただけに、まずはしっかり怪我を治してもらいたい。
逆に評価を上げたと見られるのが奥村頼人(横浜)だ。5試合全てでリリーフで登板し、チームの優勝にも大きく貢献した。ストレートは140キロ前後が多いが、ここ一番ではギアを上げて140キロ台中盤までスピードアップする。スライダー、チェンジアップという対になる変化球を巧みに使い、左打者だけでなく右打者に対しても強さを発揮した。打者としても4番を任され、外野手として先発出場しながらマウンドに上がるのは難しい部分もあったはずだが、それでも安定感は素晴らしいものがあった。貴重なサウスポーだけにプロ志望ということになれば評価する球団は多くなりそうだ。