バット(チャンドラー製) 上から35インチ(ノックバット)、34.5インチ、33.5インチ。長さの違いは歴然だ。野球をかじった程度の記者が握り比べてみても、振る感覚はまったく違った(写真:写真映像部・佐藤創紀)

 毎年の試行錯誤が続く中、23年に大谷はウェアに関してニューバランスと契約を結ぶ。そしてバットは米チャンドラー社のものに変更された。21年からチャンドラー社の日本代理店を請け負う「エスアールエス」社長の宇野誠一さんはこう話す。

「バットメーカーとしてメジャーでのシェアは5番目で、使用率は10%に届くかというところです。日本での知名度は低かったのですが、ヤンキースのアーロン・ジャッジが使用していること、そして大谷選手が使用し始めたことで広がりを感じています」

“じゃじゃ馬”バット

 大谷はチャンドラーのバットに変えてすぐ、WBC強化試合の阪神戦ですさまじい本塁打を放った。縦に落ちる変化球に体勢を崩され、左ひざを地面につきながらも特大の打球をバックスクリーンに打ち込んだのだ。この年のシーズン、大谷は44本塁打を放って自身初の本塁打王に輝く。アジア人としても初の快挙だった。そしてドジャースに移籍した翌年、54本塁打で2年連続の本塁打王を獲得した。

 ジャッジ、大谷と、昨季のアメリカン・ナショナル両リーグの本塁打王が操るチャンドラーのバットはどんな特徴を持つのか。

「素材はメープルが主で、持った選手は皆一様に『硬い』と言います。肉体的な強さやパワーが求められるバットで、長距離打者が愛用する傾向があります。極端に表現するなら、アオダモなどが鞭だとすればチャンドラーのバットは鉄の棒。しならないバットを扱うだけのフィジカルが必要で、プロ野球の平均的な日本人選手だと自在に振るのは厳しいように思います」

 実際に日本球界のある長距離打者が試したいと購入したが、「無理っす。硬くて僕には使えないっす」とあきらめたという。取り扱いの難しさがわかるエピソードだ。

 大谷が握るチャンドラーのバットの特徴は硬さだけではない。

「WBCの時から34.5インチ(約87.6センチ)のバットを使っていました。日本のプロ野球選手が使用するバットの平均から1インチも長尺なのです」

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