開幕シリーズで早速本塁打を放った大谷。チャンドラー製を表す「C」のロゴが入ったバットにも注目だ(写真:AFP/アフロ)
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 世界最高峰の舞台であるMLBで、投打ともに傑出した成績を記録してきた大谷翔平選手。その圧倒的な打撃を支えているのがバットだ。どう進化してきたのか。AERA 2025年3月31日号より。

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 いよいよメジャーリーグの2025年シーズンが開幕し、今年も大谷翔平の一挙手一投足に視線を注ぐ毎日が始まりそうだ。

 視線の先は何もそのプレーだけに限らず、今年は大谷がグラウンド上で身にまとうものに注目してみてもいいかもしれない。

 投打において大谷は近年、突出した打撃成績を残している。メジャーではここ3シーズンで10本ずつ本塁打を増やしているが、やはり気になるのはバット。選手の体の一部とも表現されるバットは打者にとって最重要の野球道具だ。大谷がベンチでバットを入念にチェックしている姿もよく見られる。選手によっては毎年わずかずつ改良しながら、そのときの体にしっくりくるバットを探し求め、公認野球規則に定められているバットの規格に基づき、その範囲内でヘッド部分の太さ、グリップ部分の細さ、全体の長さ、芯の位置を調整する。ちなみに公認野球規則は日米でほぼ同内容になっている。

23年からメーカー変更

 大谷は日本ハム時代から22年までアシックスのバットを使用、21年にはバットの素材をアオダモからバーチに切り替えた。そのサイズは長さ33.5インチ(約85.1センチ)、重さ32オンス(約907グラム)。しなりと柔らかさが特徴のアオダモは、インパクトの瞬間にボールとバットが接触する時間が長く、「ボールを運ぶ」イメージと言われ、一方のバーチはアオダモに比べてしなりが弱く、インパクトの感覚はやや硬めで、ボールをはじき返すイメージだ。

 新素材のバットを使用した21年シーズン、大谷は46本塁打とキャリアハイの数字を記録。見事にバット変更がはまった形だが、理想の追求は止まらない。翌シーズンはサイズはそのままに、詰まったところでも振り切れるように芯をグリップ部分寄りに広くした。しかし、22年シーズンは34本塁打と数を減らしてしまう。

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