現時点では昨年甲斐に次いで出場試合数が多かった海野隆司が一番手と見られており、他の捕手では渡辺陸、谷川原健太の2人が開幕一軍メンバーに名を連ねているが、経験という部分では心もとないのが現状である。嶺井はソフトバンク移籍後は出場試合数こそ少ないものの、DeNA時代からリード面には定評があり、一軍での実績はトップであることは間違いない。近年は配球などはデータ面に頼るところが多いが、それでもその場での捕手の判断や洞察力がモノを言うことはまだまだ多いだけに、シーズン中に嶺井の力が必要な場面が出てくる可能性は高いだろう。
パ・リーグで最下位からの巻き返しを狙う西武では昨年の新人王である武内夏暉の名前が挙がる。ルーキーイヤーはデビューから5連勝を飾るなど、低迷するチームにあって数少ない希望の星となり、21試合に登板して10勝をマーク。防御率2.17はモイネロ(ソフトバンク)に次ぐパ・リーグ2位の数字であり、その安定感は新人離れしたものがあった。
2年目の今年はさらなる飛躍が期待されたが、1月の自主トレ中に左肘を痛め、キャンプではリハビリ生活を余儀なくされていた。それでも手術は回避し、26日には実戦形式の打撃練習に登板して最速145キロをマークするなど順調な回復ぶりを見せている。西武は打線が大きな課題で、投手陣の強さを前面に出して戦う必要があるため、武内の復帰時期と状態によってチーム成績も大きく変わってくることになりそうだ。
今回はセ・リーグ、パ・リーグ2人ずつの名前を挙げたが、他にも一軍昇格が待たれる選手は少なくない。開幕一軍メンバーはどうしても注目が集まるものの、シーズンは長いだけに、ここから巻き返しを見せてくれる選手が多く出てくることを期待したい。(文・西尾典文)
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。