よくも悪くも人間関係にわずらわされない。無理をしなくても生活に必要な額は安定して稼げる。そんな今の仕事に就いてしみじみ感じるのは、東京の夜景の美しさだという。タワマンが立ち並ぶ湾岸エリア。刻々と様相が変化する渋谷駅周辺のビル群。夜の東京タワーも幻想的でいい。

「高校卒業後に東京に出てきて、社会人として35年間暮らした東京生活のいまが集大成のような気持ちで都心を走り回っています。先行きが不透明な世の中で、この美しい夜景だけは崩れ去らないでほしい。そんな愛おしい気持ちがわいてきます」

 ミドルシニアの転職に落とし穴はないのか。転職エージェントも「中高年向け」をアピールするようになり、その気になる人もいるが注意が必要と前出の木下さんは言う。

「エージェントはマッチング成立の確率を上げるため、その人の過去のキャリアにフォーカスすることを優先しがちですが、大事なのはその人がこれから何をやりたいのかということです」

 50代以降の転職や転身は、それまでに築いた人脈から得られる情報や仲介が大きく寄与するケースが少なくない。そのためにまず必要なのは、自分のやりたいことを言葉にして周囲に伝えることだという。会社員の場合、部署や役職名のついた名刺とは別に、自分がこれからやりたい「ライフテーマ」を記入した名刺を常備しておくことを木下さんは薦める。

「今の自分のキャリアとはかけ離れたライフテーマだとしても、周囲はそれまでのキャリアとセットで受け止めるため、思わぬところでキャリアが役立つ情報が得られるケースもよく見られます」

 大事なのは「失敗にめげないこと」だと木下さんは強調する。

「ダメでもともとぐらいの気持ちで半年、1年かけてめげない気持ちを鍛え、活動量を増やし続けていると、思わぬところから『良縁』が舞い込むこともあります。コスパやタイパは中高年の転職にはむしろ弊害。持久戦と捉えるべきです」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2025年3月31日号より抜粋

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