
「会社への忠誠心は強いほうだと思われていたみたいです。役職定年をきっかけに50代半ばで転職する人は多いと思いますが、私の場合、役職にすら就いていませんでした。それが即、マネージャー職採用での転職ですからかなり珍しいほうかもしれません」
4月からはやや規模の大きな中堅企業のマネージャー職への転職が決まっている。移籍先の企業は基本給ベースで年250万円増、年収1.5倍以上が見込まれるという。
「社内ではずっと異端でした」
こう振り返る男性の社会人としての原点は「挫折感」だという。新卒で入社した会社になじめず、2年足らずで2社を相次いで退職した。就職氷河期の真っただ中。「もうあとはない」と覚悟して入社した3社目の会社は聞いたこともない中小企業だった。
「大卒は私だけ。周囲は高卒の人ばかりでした」
「失意の入社」だったが、「この会社なら早く昇進できそう」とも考えた。だが30代も昇進はままならず、うっすらとした転職願望は常に抱えていた。ただその時には、結婚や子の誕生を経て、軽々しく動けなくなっていた。給与は低めでも経営は安定しており、会社にしがみつくことしか考えられなかった、と男性は打ち明ける。
「転職先の内定を得た既婚者が妻に反対されたことを理由に内定辞退を申し出ることを『嫁ブロック』と言うようですが、妻だけでなく、私自身も安定を手放すのは怖いと感じるようになっていました」
決め手は長く働けること、60歳以上も昇給ある企業へ
転機は入社15年目に訪れた。新規事業のコンサルタント分野への異動を承諾したことがキャリアの分岐点に。当時は誰も就きたがらない部署だったが、男性は資格も取り、こつこつとスキルを磨いた。にもかかわらず、社内評価は上がらず、管理職のポストも与えられなかった。気づくと社内フリーランスのような一匹狼になっていた。
本気で転職を考え始めたのは、コンサル業務に自信と実績を伴うようになった数年前。転職エージェントに登録したが、実際は転職先を「逆指名」する形になったという。
「エージェントからオファーのあった数社は全てスルーし、自分でリサーチして選んだ1社を挙げ、『この会社にトライしたい』と面談のセッティングを依頼しました」