本連載の書籍化第6弾!『鴻上尚史の具体的で実行可能なほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】

 コッペパンさん。コッペパンさんは、素敵な人ですね。

「相手の語りを聞くのも嫌いではありません」「人の好き嫌いを知るのもその人となりを知ることができるので」という文章を読んで、僕は感動しました。

 多くの人は、「上から目線で否定」されたら、ムッとして、それで終わりでしょう。場合によっては言い争いになるかもしれません。

 でも、コッペパンさんは、ちゃんと「その理由はなんだろう。自分が知らない、なにか役立つ情報があるかもしれない」と思って、相手の話を聞くのですね。

 そうできるコッペパンさんは本当に素敵だと思います。

 僕は、自分が好きだと言ったものを、いきなり上から目線で完璧に否定されたら、「ああ、この人とは楽しい会話はできないな」と思います。

 それが何度も続くと、「この人と友達でいることはもうやめよう」と思います。

 さて、「ひとはなぜ、他人の好き嫌いにえらそうに物申すのか」との質問ですが、一番はやっぱり、「自分に自信がない」という理由だと僕は思っています。

 自信がないからこそ、とにかく、相手を下にして、自分を保とうとする心のメカニズムですね。

 コッペパンさんが書くように、「自分のセンスの方が良いと言いたい」から否定する人ももちろんいると思います。

 でも、もし本当に自分のセンスに自信があるのなら、「上から目線で完璧に否定する」なんてことはしないんじゃないかと思います。

 自信があると余裕が生まれるでしょう。余裕があると、相手が、自分がまったく認めてないものを好きだと言っても、「なるほど。そういう人が世の中にはいるんだ。困ったものだ。どれどれ、ひとつ、なんで好きなのか聞いてみるか」なんてメカニズムになっても、「けっ、素人が。なんであんなものを好きなんだよ。最低だな。完璧に否定して叩きのめしてやる」なんてことにはならないような気がするのです。

次のページ