そういう場合だと、こんな切り返しはどうでしょうか。「ある女優さんが好きだ」と言って、完全に否定されたら、「じゃあ、あなたは誰が好きなの?」と聞くのです。カップラーメンを食べていることを否定されたら、「毎日、どんなに健康にいいものだけを食べてるの?」と突っ込むのです。

 要は、相手が全面否定したことに対して、その代わりに何を選んでいるのかを聞くのです。

 否定する人は、相手の言葉があって、否定します。相手が言った後ですから、これは無敵です。「○○っていいよね」と誰かが言うからこそ、「○○なんて全然よくないよ」と否定できるのです。

 ですから、相手に「△△っていいよね」と言わせるのです。で、相手がそう言ったら、しめたものです。

 この後に言う言葉は、コッペパンさんと相手の関係性次第でしょう。あんまり大切にしてない相手なら、「へぇー、△△なんかがいいんだ。ぷっ」と笑います。「否定返し」ですね。

 相手が大切な人なら、「どこがいいのか教えてくれる?」ですね。

 どっちでもない場合は、「ふ~ん」ですかね。

 まれに、自信満々で「△△がいい!」と言う人もいます。その場合は、やっぱり、「どこがいいの?」「全然、分からない」「教えて?」と突っ込み続けます。

 僕は、自分がまったく面白くないと思っている芝居や映画をほめる人に会うと、「どういう点が面白かったの?」と聞きます。それが納得できる視点なら、コッペパンさんがやられているように、自分の情報になります。

 それを聞いても、まったく納得できない時は、親しい相手なら、「よく分からないなあ」と正直に言うし、親しくなければ「なるほど。そういう視点ですか」と一応、受け入れたふりをします。

 でも、そうやって、自分と全く意見の違うことを楽しめる余裕は持ちたいと思います。

 コッペパンさんも、お互いの好きなものを、否定ではなく、対話で楽しめる相手と時間を過ごせたらいいですね。大丈夫。コッペパンさんの素敵な態度だったら、きっと、一緒に楽しんでくれる人は見つかると思いますよ。
 

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