倒木対策として枝が剪定された東京・目黒川の桜=2024年4月撮影、めぐろ観光まちづくり協会提供

越谷市では再開の検討せず

 埼玉県越谷市の「元荒川堤の桜まつり」が「桜の老朽化による安全面などから」中止が発表されたのは2年前だ。桜まつりを主催してきた北越谷桜並木保存会も解散した。

 約2キロにわたる元荒川堤の桜は1956(昭和31)年、地元の人々によって植えられた。観光協会や保存会が桜の維持管理を担ってきた。

 2018年、台風によって桜の木が倒れ、民家に被害が出たことをきっかけに維持管理が市に移管された。翌年、284本の診断を行ったところ、63本が「倒木や幹折れの危険性がある」と判定された。市は今年度までに危険な木の伐採をすべて終えたが、その間にも倒木が発生した。

「今でも『今年は桜まつりをやらないんですか』と、お電話をいただくんですよ。しかし、再開の検討はしておりません」(同市観光協会の担当者)

目黒川の桜「B」「C」で約6割

 東京屈指のあの桜の名所にも、影響は出始めている。目黒川のソメイヨシノは、両岸から川面を覆うように広がる花枝が魅力だった。しかし、近年は老齢化で大きく姿を変えた。弱った桜の延命・再生策として、枝が切られたのだ。

「枝を剪定して、木全体をコンパクトにすることで、倒木の危険性を軽減できます。風通しがよくなることで、多少なりとも桜の木が元気になる」と、目黒区・みどり土木政策課の三国誠係長は説明する。

 目黒川沿いの桜は、樹齢70年ほどの木が多いという。15年度に行われた樹木診断では、782本の桜のうち、706本(90.3%)が「A:健全か健全にちかい」という判定だった。ところが直近の診断では、A判定は約3割と、大きく減少した。「B:注意すべき被害が見られる」「C:著しい被害が見られる」はそれぞれ約3割だった(詳細な数字は未公表)。

「都の樹木診断の判定基準が厳しくなったこともありますが、それを差し引いても目黒川の桜の状態はかなり悪化しています。専門家によると、最近の猛暑が悪影響を及ぼしているようです」(三国係長)

 同区は23年度から3年がかりで本格的な対策に乗り出した。「めぐろサクラ再生プロジェクト」などの事業費として、初年度は約1億2000万円の予算を計上。枝の剪定のほか、幹周辺の土をほぐし、緩遅効性の肥料や土壌改良材を入れて、根の健全な育成を促している。すでに新しい枝も育っている。

「保全策を実施し、地域のシンボルとなっている桜の景観を少しでも後世に残したいと思います」(同)

今年は「倒木の恐れ」で中止になった海蔵川の桜まつり、過去の様子。美しい桜が印象的だ(三重県四日市市)=同市観光協会提供

皇居の桜は「不良」が半数

「皇居の桜」も待ったなしだ。靖国通りから北の丸公園までの堀に沿った700メートルの遊歩道「千鳥ケ淵緑道」には、千代田区が管理するソメイヨシノなどの桜が91本ある。最近の診断では「良好」が30本、「やや不良」が16本、「不良」が45本だった。

 同区から依頼されて、毎年秋に千鳥ケ淵緑道の桜の樹勢診断を行っているNPO「東京樹木医プロジェクト」に所属する樹木医・美濃又哲男さんは、こう語る。

「根元にキノコが生えたり、内部が傷んでいたりする桜は結構ありますが、千代田区は大切に保護しています。伐採された桜は多くありません」

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