
春が近づき、いよいよ「桜」のシーズンだ。だが、近年、「桜まつり」の開催中止が報じられるようになった。背景に、桜の老齢化があるという。
【実際の写真】目黒川の桜「A判定」はわずか3割、皇居の桜は半数が「不良」
* * *
桜の老朽化でまつりが中止
名古屋近郊の桜の名所、三重県四日市市を流れる海蔵川(かいぞうがわ)。恒例の桜まつりは毎年約10万人の人出でにぎわう。だが、今年の祭りは中止が発表された。
「桜の木が老いて、倒木や落枝の恐れがあると診断されたためです。本当に残念ですが、やむを得ません」と、四日市観光協会の担当者は語る。
約500本の「ソメイヨシノ」が海蔵川の堤防1.5キロにわたり地元の有志によって植樹されたのは、1953(昭和28)年の川幅の拡張工事がきっかけだった。
それから70年あまり。海蔵川の桜並木は住民の手によって守られてきた。しかし、近年は「老齢化」が著しいと、樹木医の中村昌幸さんは言う。
「昨年の桜まつりの期間中に倒木が発生したそうです。海蔵地区などの自治会に依頼されて昨年の夏、樹木診断を行ったところ、幹の内部に腐朽(ふきゅう)が進行している木が多いことが判明した」(中村さん)
昭和30~50年代に植えられたソメイヨシノ
ソメイヨシノは通常、苗木で植えられてから30~40年は旺盛に生育するが、50年を超えると、健康な状態を保ちづらくなるという。中村さんが診断した海蔵川の桜250本のうち、4分の3ほどが、倒木や大きな枝の落下などの危険性があると判定された。
「ソメイヨシノは、戦後復興やインフラ整備を機に昭和30年代から50年代に全国に大量に植えられた。こうしたケースが各地で起こることが危惧されます」(同)
実際に、昨年4月には、京都市・清水寺に続く参道「産寧(さんねい)坂」で桜の古木が倒れ、高校教員の男性が下敷きとなり、腰などを骨折する重傷を負っている。