
会談後の19年、FMSの契約額は10年前の11倍を超える7013億円となり、防衛費倍増を意味する「防衛費の対GDP比2%」を決めた岸田文雄政権の23年には1兆4768億円を記録した。政府は27年度から不足する防衛費の財源4兆円を埋める所得税増税の開始時期を決められないでいる。これ以上の「防衛費増=米国への上納」は困難なようにみえる。
ところで、冒頭のトランプ発言は日米安保条約の半分しか語っていない。確かに第5条は「米国による対日防衛義務」を規定する。一方、憲法の制約から米国を守る戦いができない日本は第6条の「日本による対米基地提供義務」にもとづいて米軍に基地を提供している。
日本側が立ち入れない
在日米軍基地は、日本側が立ち入ることのできない「米軍の聖域」だ。人体への有害性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)汚染は東京、神奈川、沖縄など基地周辺の自治体から検出される例が目立つ。
東京の横田基地では、過去3回、PFASを含む泡消火剤の漏出事故が報告され、12年10月にはドラム缶から約3千リットルに上る大量の漏出があった。東京都は横田基地に隣接する7市の地下水利用を中止したが、7市の住民の血中から全国平均の3倍を超えるPFASが検出された。
米軍専用施設は沖縄県に7割が集中、青森県が1割、東京都と神奈川県に5%ずつある。それぞれに米軍の航空部隊が置かれ、地元との間で早朝・深夜の飛行を禁止する協定を締結しているが、米軍は守っていない。
すべての米軍航空基地で周辺住民が騒音公害訴訟を提起し、過去分の騒音被害について賠償金を支払うことが判例として定着している。日米で折半する取り決めにもかかわらず、米軍は支払いを拒み、日本政府が賠償金の全額を負担する。
米軍基地は世界各地にあり、米政府は各国政府に対し、駐留経費の負担を要求。米国防総省が04年に発表した統計によると、日本は駐留経費の実に74.5%を負担。韓国は40%、ドイツは32.6%だった。