
トランプ米大統領が「不公平感」をにじませた日米安全保障条約。一方で、日本側こそ、かなり不公平と感じる実態がある。AERA 2025年3月24日号より。
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米国大統領として型破りな発言を続け、世界中を驚かせているトランプ氏。3月6日、記者団の質問に答えるなかで、日米安全保障条約について「我々は日本を守らなくてはならないが、日本は我々を守る必要はない。いったい誰がこんな取引を結んだのか」と不満を表明した。
「取引(ディール)」を好むトランプ氏らしい表現で日米安保条約は不公平だと指摘した。この発言より前の2月にあった日米首脳会談後の共同声明には「米国は、核を含むあらゆる能力を用いた、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを強調した」とある。日本防衛を確約していて、不満のかけらも見えない。
予測不能なトランプ氏とはいえ、1カ月で考えが一変するとは思えない。トランプ氏は日本が米国との取引で「巨額の利益を上げている」とも述べている。日米安保条約を不公平とした発言は、武藤容治経済産業相が訪米する直前だけに、日本に取引を求めるメッセージとみるのが自然だろう。
1期目で「爆買い」迫る
1期目の2017年2月にあった日米首脳会談で、トランプ氏は米国製兵器の「爆買い」を迫り、日本で導入することを決めたのが地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」だ。やりとりは当時の安倍晋三首相が明らかにしている。
〈トランプ大統領との首脳会談で、FMSを通じてF35戦闘機を147機購入する、イージス・アショアは2基導入する、と強調してきました。『これだけあなたの国の兵器を買うんだ』と言って、米国の軍事力増強の要求をかわしてきたのです〉(『安倍晋三 回顧録』から)
FMSとは政府間の兵器売買方式のこと。まだ使えるF15戦闘機を廃棄してF35と入れ替えるのは奇妙だと筆者は考えていたが、トランプ氏に迫られた安倍氏の政治判断だった。イージス・アショアはその後、艦載型に変わって1基1200億円が1隻3920億円に高騰した。