
早慶のようなトップ私大に合格するには付け焼き刃の受験対策では難しい。大勢の合格者が輩出する高校はどのような教育を行っているのだろうか。AERA 2025年3月24日号より。
【注目ランキング】早稲田大学の合格者上位10校を10年前と比べてみた
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早稲田大に強い注目校として挙げられるのが、市川(千葉県市川市)だ。25年の合格実績では157人と8位につけた。ちなみに東大の合格者は17人。早稲田大に強い理由を、同校進路指導部長・谷津史浩さんは次のように話す。
「最近の傾向として、国立大を志望する生徒が多くなっています。その生徒たちの併願先として増えているのと、当初から早稲田大を希望する生徒ががんばって合格をとっているのと、その合算で数が伸びています」
早大志望者向けの講習
同校では高1から大学受験に向けて準備を始める。大学研究として、高1の夏休みにオープンキャンパスへの参加を夏期休暇の課題にしたり、卒業生を呼んでキャリアセミナーを実施したりしている。
「大学へは、学問を学ぶために行くという志を持ってほしい。学問の面白さを知ってもらうために、大学で教鞭をとったり研究に従事したりしている卒業生のインタビュー動画をホームページに立ち上げ、生徒に視聴させています」(谷津さん)
受験対策としては、高3時に早稲田大を志望する生徒を対象に、1年間を通して放課後や長期休みを利用した講習を行っている。学習計画、参考書や問題集選びのアドバイスも行う。同じ目的の生徒が集まることで、受験に向かうモチベーションも上がるという。
「長期休暇の講座は他教科が加わることもありますが、通常は英語のプログラムが中心です。早・慶に合格するためには、英語力が鍵になります」(同)
同校は1937年、教育者・古賀米吉により男子校として設立され、2003年に共学校へ。親の教えを「第一教育」、教師による学校教育を「第二教育」、自ら学ぶ教育を「第三教育」として、建学の精神に掲げている。
自学の入り口として大切にしているのが読書で、図書館は第三教育を担う場という意味を込め「第三教育センター」と呼んでいる。気軽に立ち寄れるように入り口の近くに設けており、開校時間に合わせて朝7時から夕方6時まで開館している。蔵書数は13万冊と、中高にしては別格の冊数だ。
創立者の米吉は若い時分貧しくて読みたい本があっても買うことができず、生徒にそういう思いをさせたくないと、本揃えにはこだわったという。その思いが引き継がれ、現在も続いている。中1から読書の授業を設けて近代の文豪の小説や古典文学などにもチャレンジし、ビブリオバトルなどの活動も取り入れている。