(撮影/写真映像部・佐藤創紀)
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 ここ数年、「豆腐バー」など“進化系”豆腐が続々登場。豆腐が苦手という記者が最新豆腐事情を取材してみたら……? AERA 2025年3月17日号より。

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 正直に言う。私(33歳・女性)は豆腐が好きではない。特に冷ややっこのえぐみが苦手。だから、豆腐を選ぶとき、値段と賞味期限しか見ていなかった。

 豆腐料理といえば冷ややっこやみそ汁などメニューがマンネリ化。“豆腐離れ”とも言われてきた。だが、健康志向が高まるいま、手軽なタンパク源として豆腐が見直され、メーカーも進化系豆腐を続々出している。

 業界空前のヒット商品といえば、「豆腐バー」だ。食品メーカー「アサヒコ」が2020年に発売して昨年末までに累計8千万本を販売し、シンガポールなどにも販路を拡大した。池田未央社長は言う。

「冷ややっこさえも、お皿やしょうゆを出して意外と煩わしい時がありますよね。でも豆腐バーはバナナの皮をむくように取り出して、片手で食べられます」

 シンプルな豆腐味のほか、枝豆とひじきを混ぜ込んだ「おかず系」、ガトーショコラなどの「スイーツ系」を販売している。

罪悪感なく食べられる

 コンビニでは、サラダチキンの横に並べられることが多い。忙しいビジネスパーソンが食べられるタンパク質であり、健康意識の高い人からは「罪悪感なく食べられる」と言われる。

 筆者も食べた。おかず系は、がんもどきなどを食べる感覚でおいしい。シンプルな豆腐味もえぐみはない。抹茶テリーヌは、パッケージを開けると抹茶の香りが立った。

 豆腐は白くて四角。見た目はどれも似ているが、中身は違う。

「低価格競争のために、豆乳の味が薄く、にがりのえぐみが強い豆腐もあります。そこで、私たちは豆腐のイメージを変えるべく新技術を使って、濃厚な豆乳を使ったお豆腐を作りました」(池田社長)

 アサヒコは3日、「職人豆腐」という新ブランドを立ち上げた。職人豆腐と書いて、「クラフト豆腐」と読む。従来品は、温かい豆乳を一度冷ましてから、パックに詰めていた。だが、豆乳を一度冷ますと、風味や甘みが飛んでしまう。そこで、しぼりたての温かい豆乳で作ろうと、職人たちが試作を重ねた。温かい豆乳はすぐに固まるのが課題だったが、ゆっくり固めるにがりの開発に成功したという。

「まずそのまま食べてください」

 柔らかい「清純仕込」を一口。近所のスーパーの60円台の絹豆腐と比べたら、段違い。舌でつぶしたときにしっかり豆の味がする。

「次は塩をかけてください。甘みが引き立ちます。最後は、温めるとできたての香りがします」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2025年3月17日号より抜粋

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