柱のすき間から外気が入り込む西武のドーム球場

「ファンを置き去りにした発言」

 ただ、移転には反対だという。

「地元には応援してくれるファンがたくさんいます。西武ファンは声が大きくて勇気づけられる。あの大声援のアドバンテージは間違いなくあります。名古屋は中日のファンが多いし、あまりイメージが浮かびません」

 西武を取材するテレビ関係者はこう語る。

「新庄監督は西武ファンの人気が高いんです。昨年のベルーナドームでの最終戦は日本ハム戦でしたが、新庄監督が西武ファンで埋まった右翼スタンドに丁寧に挨拶してくれたので、西武ファンから『頑張れ、頑張れ、ファイターズ!』とCSに進出した日本ハムに異例の激励コールが送られました。新庄監督は拳を突き上げて答えていた。なかなか見られない光景でした。新庄監督はパ・リーグや球界全体のことを考えて発言することが多いのですが、今回のコメントは違うかなと。選手のことを思って発信したのかもしれませんが、新庄監督が大事にするファンの感情が置き去りにされています。日本ハムは東京から北海道に移転して人気球団になった経緯がありますが、埼玉で応援している西武ファンの心理に配慮してほしかったです」

「身売りしろと言っているようなもの」

 そもそも、西武の球場が現在の土地にある意味合いを考えると、球場移転は現実的な話ではないだろう。西武鉄道グループは、1978年に福岡に本拠地があったクラウンライターからライオンズの経営権を買収すると、西武鉄道の活性化をもくろんで西武線沿線の埼玉県所沢市に本拠地を置いた。このため西武本社の関係者は、新庄発言に語気を強める。

「球場移転するなら球団を持つメリットがなくなる。身売りしろと言っているようなものですよ。日本ハムだって『北海道は遠いから本州に移転してくれ』って言われたら、嫌な気持ちになるじゃないですか。他球団の監督が、本拠地移転なんて軽々しく口にすることではない。今年は日本ハムに絶対負けてほしくないです」

 また、球場の立地についても、ファンの評判が悪いわけではない。西武応援歴30年の40代男性は「車の場合、周囲は一車線の道路が続くので、試合後は渋滞に巻き込まれますが、電車だと球場が駅の目の前だし、40分弱で池袋に着く。交通アクセスは不便に感じないですよ」と話す。

 このオフ、新庄監督の発言が取りざたされることが多い。日本ハムから米国にわたって1年足らずでソフトバンクに移籍した上沢直之に対して、「彼が投げる試合は負けない」などと発言し、ソフトバンク戦が遺恨試合になるといわれた。今度は「西武本拠地移転」発言で、西武関係者やファンの反感を買っている。今年のパ・リーグは、否が応でも熱い闘いが繰り広げられそうだ。

(今川秀悟)

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