
「万博に出せる予算はもうない」
前回のドバイ万博はコロナ禍で1年遅れの21~22年に開催され、192カ国が参加した。参加国が独自のパビリオンを持つ、「1国1館」制を導入したが、やはりコロナ禍の影響もあり、当初は集客に苦戦した。
そこで、ドバイのキャリアフラッグであるエミレーツ航空に搭乗した乗客には航空券1枚で1日券を無料にするキャンペーンを実施。コロナのPCR検査費用も無料とするなどの対策を打ち出し、最終的に来場者は約2400万人となり、目標に達した。外務省の幹部がこう説明する。
「コロナ禍での開催とあって、期間中にパビリオンでもコロナ感染者が出るなど入場者数が低迷した。すると、ドバイ政府は矢継ぎ早に、入場料無料などの対策を打ち出した。最後は、無料を前面に打ち出して、かき集めるようなかっこうで2400万人を確保した感じだ」
2010年の中国・上海万博は来場者が7308万人で、それまで最多だった1970年の大阪万博の6400万人を超え、過去最多を記録した。
上海で長く日本料理店を経営する男性は、こう振り返る。
「世界最多の入場者数を、という掛け声でしたが、入場料は日本円換算で大人1人3000円弱と、当時の地元ではちょっと高め感がありました。上海市は、入場者数を増やそうと市内の全家庭に1枚ずつ入場券を配布し、地方からも特典をつけて入場者を集めていた。国威発揚な感じもあって、うちの従業員も急に万博に行くと店を休んでいました」
大阪・関西万博では建設費が当初の1250億円から最大2350億円に膨れ上がり、税金投入に厳しい声が出ている。入場料収入が見込みに達しなかったとき、さらに税金を投入することになると、大きな批判を浴びることは間違いない。
冒頭の大阪府幹部はこう話す。
「ドバイ万博や上海万博のなりふりかまわない集客作戦について、情報としては聞いています。でも、こちらはすでに建設費などが膨れ上がり、万博に出せる予算がないのが実情。これ以上のウルトラCなんて、とてもじゃないが無理です」
万博は4月13日から10月13日までの半年間。10月の閉幕時に、吉村知事はどのような表情をしているだろうか。
(AERA dot.編集部・今西憲之)

