チケット購入のデモをする万博公式キャラクターのミャクミャク(左)ら

希望のパビリオン外れ、「行く気が失せる」

 一方で、万博に行きたいと思った人がチケットを購入しようとしても、複雑な手続きが待っている。

 当初、万博の入場券のチケットは、事前の電子チケット購入が原則だった。購入するためには「万博ID」の取得が必要で、ネットを使って「万博ID利用規約」と「個人情報保護方針」に同意した後、個人情報として、名前、生年月日、メールアドレスなどを入力していくことになる。これについては手続きが煩雑でネットに不慣れな人や外国人には難しすぎるとの声が噴出し、万博の参加国からも批判されている。

 また、「個人情報保護方針」には、方針に同意した場合、名前や生年月日だけでなく、クレジットカード番号、スマートフォンの位置情報や生体情報(顔画像、音声、指紋等)、SNSに関する情報なども含めた個人情報が、「第三者」に提供される場合がある、と記されている。そして、その「第三者」は次のように、かなり幅広い。

〈①政府(博覧会に関係する規制当局、外国政府や地方自治体を含みます。)、博覧会国際事務局(BIE)、博覧会への協賛企業、パビリオン出展者等の博覧会の関係者
 ②SNS事業者、広告関係会社、広告配信事業者、データ分析事業者、DMP事業者、媒体社その他当協会が業務を提携する事業者〉

 このことも、個人情報提供への不信感につながり、チケット購入をためらう一因になっているとみられる。

 さらに、なんとかチケットを購入した後も、難関が待っている。チケットを購入した大阪府内の男性がこう嘆く。

「万博への来場日を決めると、今度は地下鉄かバスかどの交通機関で行き、東西2つある入場ゲートのどちらから入るかなど、その選択まで求められる。そしてパビリオンも予約しないといけないが、予約は抽選となり、行きたいパビリオンに入れるかわからない。私はパビリオン予約、すべて外れました。こんなに面倒で、希望のパビリオンに行けないとなると、もう行こうという気が失せます」

 万博協会の副会長も務める吉村知事や関西経済連の松本正義会長らは、今年2月に石破茂首相と面会し、万博入場には事前予約が必要という原則を撤回し、「当日券」と、万博IDを登録しなくても買える「簡単来場予約チケット(仮)」の導入方針を決めた。そもそも事前予約が前提だったのは、万博会場がアクセスの悪い夢洲(ゆめしま)にあるため、来場者が殺到して事故が起きないようにという理由だった。だが、あまりにもチケット販売が不振なため、なりふりかまっていられなくなってきている。

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