そして石破政権は、「より安価」な選択肢を優先した。国民民主党が主張するように所得税額控除限度額を103万円から178万円に引き上げると7兆円以上の税収減となるが、維新が主張する「高校授業料無償化」ならおよそ6000億円と“格安”だ。2026年度に繰り延べた「0歳から2歳までの保育料無償化」や「給食費無償化」を入れても、2兆円に満たないからだ。

日本維新の会の党大会であいさつする吉村洋文代表

 国民民主党にとって、これは昨年12月の自公国幹事長合意を事実上むげにされたにも等しい。国民民主党はさっそく3月3日に合意のひとつであった「2025年度からガソリン税の暫定税率を廃止する」とする法案を立憲民主党と共同提出し、日本維新の会との差を見せつけた。

 これに対して維新は同日、2026年度からガソリン暫定税率を廃止する法案を提出。「今年の4月からは間に合わない」とし、自公と維新、国民民主党と立憲民主党の5党協議会の設置を呼びかけたが、国民民主党はこれを拒否し、立憲民主党も乗り気とは言い難い。

野党がバラバラであればあるほど少数与党は安定?

 このように野党がバラバラであればあるほど、少数与党にはありがたい。その都度、相手を「つまみ食いつまみ食い」すれば、安定的に多数派の地位を得ることができるからだ。

 もっともこれには、参議院で与党(自公)が過半数を制しているという前提が存在する。もし次期参議院選で自公が過半数を失えば、政権交代の引き金になるかもしれない。

 たとえば2007年の参議院選では自民党は27議席減の37議席しか取れず、非改選と合わせて83議席となって109議席の民主党と逆転。これが2年後の政権交代の予兆となった。

 また2010年の参議院選では、与党だった民主党が10議席減の44議席しか獲得できなかった一方で、下野していた自民党は13議席増の51議席を獲得し、改選第1党の地位を確保。2年後の政権奪還につながっている。すなわち石破首相が率いる自民党は、尻に火が付いている状態に等しいといえるのだ。

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