
今年、東京大学や京都大学など難関大学を突破した合格者たち。栄光をつかんだ生徒の素顔とともに、熾烈な受験競争を支えた親たちの献身から合格の秘訣をひもといてみる。
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新田冬和さん 國學院大學久我山→京都大学 法学部
「戦争も原爆も絶対にいけん」
5歳の時に聞いた曾祖母の言葉が新田さんを突き動かしてきた。母親の故郷である広島には毎年、夏休みに帰省。曾祖母が語る戦争のむごさや原爆の恐ろしさに熱心に耳を傾け、8月6日には平和記念式典をテレビで見るのが習慣だった。祖父母は元教員で、平和を語る環境があった。
大きな転機は小学4年生の時。米国のオバマ大統領(当時)が広島を訪問した。現職の大統領の訪問は初めてだった。
「戦争も原爆も、誰も幸せにならないし、皆が嫌な思いをしている。だめことだと皆が知っているのになぜなくならないのかとずっと疑問に思っていました。一方で、幼心にいつか圧倒的な正義が勝つだろうとも思っていて、核保有国である超大国のオバマ大統領が来たことで、これで核廃絶に向かうだろうと思いました」
この夏、新田さんは夏休みの自由研究として、オバマ大統領の広島訪問と核軍縮について取材を重ねた。2日間かけて広島の平和記念公園を歩き、年齢問わず声をかけた。
「広島訪問自体は多くの人が好意的に捉えていましたが、核軍縮が進むかについては『それはまた別の話』という意見が多く、『進む』と答えた人のほうが少数派でした。だめとわかっていながらそれでも進まない現実があるんだと気づき、もっともっと知識をつけて世界を知らなければならないと思いました」
それまでは自分の中の理想を考えていただけ。実際に現場に行き、直接話を聞くと自分の知識の世界ががらりと変わるというこの経験は、その後の自由研究にも生かされた。ドトールとスターバックスはどちらが強いかをテーマに、地域の全店舗を回って客層や店舗面積を調べたこともある。母親の沙綾さんはこう話す。
「小さなころから答えがないものを考えることが好きで、疑問に思ったらすぐ調べるというフットワークの軽さがありました。一度やると決めたら何を言おうと聞かないので、好きなようにやらせようと家族は面白がっていました」
社会全般への関心は尽きず、高校入学後は課外活動に力を入れた。高校生向けのビジネスコンテスト「マイナビキャリア甲子園」では決勝大会に進出するなど、プレゼンテーション能力に磨きをかけ、1年生時からは高校生平和大使も務めた。