電通本社ビル(撮影/上田耕司)

電通のフジテレビ担当は「それどころじゃない」

 昨年までは定期的に開催されていた大規模な飲み会もめっきりなくなったと嘆く。

「電通でフジテレビの仕事をしている人も、昨年までは40~50人規模の飲み会をやってくれていました。これが良い売り上げになったんだけど、その人に『今年もやってくれませんか』と言ったら、『いや、それどころじゃないよ』と言われてしまいました。地下街で飲んでいると、上司にうわついた感じで見られるのかもしれませんね」(同)

 フジテレビ問題とは別に、電通の業績自体もかんばしくない。2024年12月期の電通グループの連結決算は最終損益が1921億円の赤字だった。「のれん」の減損損失の計上が要因だとされている。

 一方のフジテレビはご存じのように設立以来、最大の危機にある。1月末までにCMをACジャパンの広告に差し替えた企業は311社にものぼる。例年であれば、2月は同社とスポンサー契約を結ぶ企業は400社以上あるというが、今年は72社にまで激減(2月25日時点)。その結果、放送収入は「前年比で約10%弱のレベルまで落ち込んでおり、90%のマイナス」(フジテレビの清水賢治社長の記者会見発言)だという。

 作家で元博報堂社員の本間龍氏はこう語る。

「電通の中では各テレビ局ごとに担当部局が分かれていますから、フジテレビ担当の数字は激減します。通常、スポンサー企業はフジテレビに出稿するはずだった広告宣伝費を他のテレビ局、雑誌、インターネットなどに振り分けます。ただ、テレビCMは収益率が高いので、他のところに振り向けても収益は下がる可能性が高い。電通の社員も地下街で飲んでいる場合じゃないということでしょう」

「カレッタ汐留」に入る居酒屋の男性店長はこう話す。

「うちは電通のお客さんが3~4割くらいいて、これまでは仕事が終わったらよく飲みに来てくれていました。だけど、今年の1、2月は1割来たらいいほうですかね。金曜の夜だけだと、売り上げは昨年の3分の1くらいに落ち込んでいます。特に月曜、火曜の夜はガラガラです」

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