人は分かりあえないからこそ、「分かり合おうとするのは愛ですよね」と語る小袋成彬さん(撮影/今村拓馬)

 それはわかるんだけど、自分としては割って入ったうえで「反対」と言いたい。だってダメじゃないですか、そんなの。音楽家だから言えるということもあるだろうし、それはきちんと書いておくべきだなと。

――それも芸術家、音楽家の役割の一つですよね。日本ではエンターテインメントにおいてそういう発言をすることを避ける傾向がありますが……。

 やっぱりシガラミがあるんでしょうね。それはイギリスも同じで、勲章をもらったような人はあまりそういう発言をしないんですよ。自分はそうならないように気を付けたいし、あとは勇気の問題だと思ってます。いくらシガラミがあったといても、「そもそもダメですよね」と言えないと人間として終わりだなと。たまには「そんなこと忘れて、ディスコミュージック聴いていたい」と思ったりもしますけどね(笑)。

分かり合おうとするのは愛

――なるほど。「パレスチナ問題に寄せて」のエッセイでは、「私は心のどこかで、人間は必ず全員が手を取り合って分かり合える日がくるだろうと信じていました。しかし世界中の色々な人間の目を見て話して、それぞれの文化や歴史に直接触れることで、私の考えはあくまで博愛主義という一つの思想に過ぎないことを知りました」という一文も。人種や宗教などの違いもそうですけど、「この人とは絶対に分かり合えない」と感じることもありますか?

 めちゃくちゃありますよ。だって親のことだってわからないじゃないですか。親の幼少期のこともぜんぜん知らないし、わかっている部分も勝手に想像で色付けしていたりするので。「Shiranami」という曲(アルバム『Zatto』収録)で「誰もこの俺の歴史を知らない」という歌詞を書いたんですけど、マジでそうだと思います。

――分かり合えないのが前提。

 はい。だからこそ、分かり合おうとするのは愛ですよね。

――現在はILR(Indefinite Leave to Remain/無期限滞在許可書)の申請中だとか。

 もう1年以上待ってます。政権が変わって、ポリシーが変わったのかもしれないけど、「まだ決められません」というメールが2回来ました。先のことはわからないですけどね。

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