小袋成彬さんは現在、イギリスに住んでいる(撮影/今村拓馬)

 自分が住んでいるのはプレミアリーグのアーセナルの本拠地の近くなんですが、選手の年棒がバカみたいに上がってるんですよ。「Money」には〈サッカーチームでも買ってみようかな〉(Think I’ll buy me a football team)という歌詞もあって、「当時からわかってたんだな」と。本当に色あせない歌詞だと思いますね。

私たちは終わりが来るゲームをしている

――2024年は世界的に物価が上がった時期でもあって。経済システムに対する不信感も高まっていると思います。ロンドンの物価高騰もすごいですよね。

 めちゃくちゃですね。普通のサンドイッチがめちゃくちゃ高くて、しかもマズい。「一体、何を目指してるの?」という感じですよ(笑)。この先どうなるかはわからないけど、絶対に終わりがくるゲームをやってるわけじゃないですか、自分たちは。必ず終わりが来ることだけは確実だし、ルールを変えないとダメだと思うこともしょっちゅうあります。音楽もそう。資本主義に乗ろうと思ったら、いろんな人とコラボして、短い曲をコンスタントに出さないとやっていけないんです。私みたいなやり方では、きっと音楽活動は続かないと思います。

――ニューアルバム『Zatto』はロンドンで知り合ったミュージシャンたちと丁寧に作られた作品ですからね。

 だけど8曲しか入ってないですからね。3年間がんばって、悩みに悩んで8曲。売れてるラッパーだったら、100曲くらい作ってバンバン儲けてますよ(笑)。

――Black Lives Matterをテーマにした「優しさと怒り」や「ロシアのウクライナ侵攻に寄せて」「パレスチナ問題」も本書の読みどころだと思います。小袋さんははっきりと戦争反対の態度を示していますね。

 それは当然だと思います。だけど、いろんなシガラミに巻き込まれるとそれが言えなくなることも理解しているんですよ。実際に当事者として関わって、外交努力などで争いを止めようとすれば、直接「戦争反対」は言いづらいこともあるでしょうし。

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人は分かりあえない