「健康」の中身が多様化した

 淡路氏の話すように、消費者がヨーグルトに求めるものはおいしさに加えて、昔も今も「健康」(機能性)だ。その健康訴求がどう変わったのか。競合メーカーの取り組みも紹介したい。

 「BifiXヨーグルト」や「朝食りんごヨーグルト」「ヨーグルト健康」などの人気ブランドを持つ江崎グリコ。このうちヨーグルト健康は1969年に誕生しており、健康をキーワードにしたブランドでは明治や雪印(現在は雪印メグミルク)よりも早かった。

 「まだ世の中にヨーグルトが定着していない時代に“牛乳”と“乳酸菌”で親子の健康を育みたいという思いから誕生しました。生きて腸まで届くプロバイオティクス乳酸菌を使用しており、お子様のすこやかな成長をはぐくむヨーグルトとしても愛され続けています。発売55年を迎えた昨年、栄養機能食品(ビタミンD)としてリニューアルしました」

 こう話すのは江崎グリコ・乳業事業部の 貴史氏(マーケティング部 発酵乳マーケティンググループ グループ長)だ。現代の消費者がヨーグルトに求める機能は何なのか。

 「人によってさまざまですが、“腸内環境をととのえる”ことを目的に食べられる方も多くおられます。近年では機能性表示食品等も増えて健康訴求もより具体的となり、一言でヨーグルトといっても多くの機能的な表記を目にするようになりました」(熊氏)

 明治と江崎グリコがともに正会員として加入するのが「短鎖脂肪酸普及協会」だ。“タンサ脂肪酸”とは腸内環境を整える働きを持つ脂肪酸で、少し専門的になるがヨーグルトに含まれたビフィズス菌が食物繊維などに反応して生み出すものである。

朝食以外でも食べてほしい

 長く続いたコロナ禍では、ヨーグルトの喫食も伸びた。明治の淡路氏は「在宅勤務となり家族だんらんの機会が増え、当社の体調管理を訴求したヨーグルトも支持されました」と話す。さまざまな食品が値上がりし、外食メニューの価格も高くなった現在、別の意味で巣ごもり消費も期待できる。

 喫食シーンの拡大には、朝食イメージからの脱却も課題だろう。その取り組みの象徴がメニューレシピだ。明治も公式サイトで多彩な提案をしている。

 「ヨーグルトは爽やかな酸味が特徴なので、さまざまな料理に合わせやすいです。昔から、たとえばカレーの隠し味に入れる方もおられましたが、当社では『遅く帰った日の食事メニュー』など生活シーンに合わせたメニュー提案もしています」

 さらに関係者が熱い視線を注ぐのが、今年4月13日から約半年間、大阪市の人工島・夢洲で開催される「大阪・関西万博」だ。

 「半世紀ぶりに大阪で開催される万博で、ブルガリア共和国もパビリオンを出展されます。前回の大阪万博が明治ブルガリアヨーグルト誕生のきっかけとなったように、半世紀つないできた歴史を踏まえ、世界各国の方にも訴求していきたいです」

 伝統にあぐらをかくとあっという間に淘汰される時代。絶えざる革新+商品との接点を広げることで、消費者に気づいてもらう取り組みを続けていく。

(高井 尚之:経済ジャーナリスト/経営コンサルタント)

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