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2024年1月1日に起こった能登半島地震では、動物たちも被災した。行き場のない猫たちを引き取り、譲渡につなげるために奔走している。動物たちにも息の長い支援と理解が必要だ。
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家族を待つ能登半島の被災猫たち
目はきらめいて、興味津々におもちゃを追っている。爪とぎで伸びをしたと思ったら方向転換して猫パンチ。元気いっぱい、わんぱくだ。この遊び好きのキジ白猫の名前はオー、男の子で推定8歳。能登地方から東京シェルター・シェアリング神保町にやってきた「被災猫」だ。
2024年1月1日に発生したマグニチュード7・6の能登半島地震は最大震度7を記録、516人が亡くなり、全壊・半壊合わせて約3万棟の住家被害が出た(25年1月23日現在)。
9月21日から23日にかけては能登半島北部で記録的な大雨となり、河川の氾濫と土砂災害で16人が亡くなった。輪島市、珠洲市、能登町を中心に多くの住家被害が出た。
大地震と続く豪雨で家や家族を失い、ペットと暮らし続けることが困難になった人は少なくない。オーの飼い主もその一人だ。このシェルターを運営する一般社団法人「東京都人と動物のきずな福祉協会」代表の香取章子さん(70)は、こう話す。
「能登半島で被災した猫たちを引き取って、新しい家族を探して譲渡しています。これまでに49匹を引き取り、34匹を新しい家族につなげました」
阪神・淡路大震災がきっかけ
香取さんは長らく、動物愛護に携わってきた。子どものころから猫が好きだった。社会人になり編集者として忙しい毎日を送っていたが、いつしか行き場のない「訳ありの猫たち」を引き受けるようになっていた。
2000年に「ちよだニャンとなる会」が発足し、千代田区と連携・協働して猫問題への取り組み始めた。11年に「殺処分ゼロ」を実現。23年には都から認可を受け、NPO法人になった。
本格的な活動を始めるきっかけは、30年前の阪神・淡路大震災だ。60万棟以上の家屋が被害を受け、6434人が亡くなった震災。人命が失われていく様子を報道で見て、涙が止まらなかった。がれきの隙間にいる、途方に暮れたような犬や猫の姿も見た。